位相感応型光増幅器(PSA)を中継増幅器として用いるWDM多増幅中継光ファイバ伝送システムの伝送性能を明確化するため、PSAとして用いる光パラメトリック増幅器の光増幅性能、各中継PSAの励起光位相同期回路に求められる基本要求条件、BPSK信号の多PSA中継伝送の基本性能を理論的に明確化した。 (1)WDM信号光パラメトリック一括増幅回路構成技術の検討:パラメトリック利得媒質として、分極反転ニオブ酸リチウム光導波路と高非線形光ファイバについて、非線形係数、相互作用長等の利得媒質パラメータと、同相成分利得、直交位相成分減衰、帯域幅等の増幅特性の関係を理論的に検討し、基本的な関係を明確化した。特に、利得飽和効果が信号品質向上をもたらす可能性を定量的に明らかにした。 (2}光位相同期回路構成法の検討:PSAは励起光との厳密な光キャリア位相同期系において実現できる。我々が提案している光周波数同期網の考え方の基本として開発した光周波数基準コムに励起光源を同期させるためのPLL回路を試作開発し、位相誤差35mradの良好なPLL引込特性を達成した。さらに、3km高非線形ファイバを用いて、PSA基礎実験を行なったところ、増幅現象を確認できた。また、励起光と信号光の平均位相の誤差が伝送特性に与える影響について理論検討し、位相誤差の分散とPSA多中継伝送リンクの符号誤り率劣化の関係を明確化した。 (3)PSA中継増幅による再生中継間隔の評価:BPSKシングルチャネルPSA多中継伝送シミュレーションアルゴリズム及びプログラムを作成しPSAの性能と再生中継間隔の関係を明確化すると共に、WDM伝送路ファイバにおける波長チャネル間クロストークの基本アルゴリズム、PSAにおけるWDM増幅アルゴリズムの基本部分を検討した。 これらの成果は、今後の多値光位相変調信号のWDM多PSA中継伝送の性能を検討するための基礎となる成果である。
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