研究概要 |
本研究では,災害現場・資源探査等を想定した自律型ロボットの周囲環境計測(目標位置・形状認識等)のための,超広帯域画像レーダ技術を開発する.超波長分解能・精度を実現する高速レーダ画像化手法としてRPM(Range Points Migration)法が提案されている.同手法は,観測領域が制限される状況下では,目標境界の大部分が影領域に陥るという課題を抱えており,これを解決するため,目標形状を近似的に複数楕円体の集合とみなし,限られたRPM推定境界点から楕円体による目標外挿補間を行う.本年度では次の成果を得た,雑音環境下におけるデータ空間の補間誤差が,実空間(像空間)上の補間誤差に対して著しく低くなることに着目し,データ空間上に写像された距離曲線に観測データを対応させることで,補間の安定性及び精度を飛躍的に改善させた.また同補間手法を3次元問題へと拡張し,観測データの干渉程度に応じた重み係数を導入することで、複数目標が混在する場合でも高精度かつロバストに目標境界を外挿補間できることを明らかにした.更に,移動目標計測に対応するため,マルチスタティック観測(一点送信,多点受信)とRPM法を融合させた画像化手法を提案した.同手法では,各時刻で計測されたRPM法の点を追跡することで,任意の形状・運動(回転・併進)に対応し,雑音環境下でも極めて高精度に目標移動軌跡と形状を同時に推定することが可能である.また,多重散乱波イメージングにおいて,従来の雑音耐性を飛躍的に改善する手法を提案した.以前に提案した手法は,高速な多重散乱波画像化を実現するが,距離曲線の微分を用いるため,干渉や雑音に対する耐性が低く,実用性に乏しいことが指摘されていた.これに対し,本手法では,多重散乱波に対応するよう拡張されたRPM法を導入することで,高速性を保持しつつ,干渉・雑音に対する耐性を飛躍的に改善させることに成功した.今後は,同手法の実験的検討とマルチスタティック観測との融合を検討し,移動目標計測にも対応する手法へ拡張する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画の通り,準遠方界計測のための楕円体外挿法を開発し,3次元問題・干渉状況に耐えうる手法を確立した.従来の光学画像処理等で用いられる楕円補間法は,多種多様な手法があるが,全て実空間での補間法である.一方,レーダ計測では目標と観測素子間の距離情報は正確に推定できるが,目標形状推定精度は画像化アルゴリズムの精度に依存し,実空間の補間では同誤差が重大な補間誤差に結びつく.これに対して本手法は,距離と素子位置で構成されるデータ空間上で楕円補間を行うことで,上記の問題点を本質的に改善した.同技術は従来レーダ計測の画像化領域を飛躍的に広げることを可能にし,特に準遠方界レーダ計測において重要な成果であると考える.更に,多重散乱波イメージングにおいて,複雑形状・雑音環境下でも高精度に画像化領域を拡大させることに成功し,本技術の実用化に向けて,着実に成果を上げていると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,準遠方界計測と多重散乱波イメージングにおいて,数値計算によりその効果を確認している.同技術の実用性能を評価するため,実験的検討が必要となる.既に基礎的な実験環境(簡易電波暗室,パルス発生器,アンテナ,ポジショナー,広帯域オシロスコープ)は整っており,様々な形状等でのデータを取得し,上記手法の実用性能を評価する.このため,本年度の予算では特に目標製作費,ケーブル等の物品費についても計上している.また,偏波を用いた目標形状認識においても,数値解析を中心として発展させる.
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