研究概要 |
本研究は,電波であるミリ波を用いた新たな画像計測技術,ミリ波帯パッシブマイクロスコピーの開発を目的としている。研究代表者等が提案し研究・開発を実施しているミリ波帯走査型近接場顕微鏡技術とミリ波帯で培われている高感度信号計測技術を組み合わせることにより,物体から自然放出されている熱雑音の内のミリ波成分を受信して,回折限界をはるかに超える微小空間分解能での画像化が可能であると考えている。ミリ波帯パッシブマイクロスコピーを実現するための計測システムを構築し本システムの特性評価を実施すると共に,微小空間分解能での温度分布画像化を検討し,ミリ波帯パッシブマイクロスコピーの有用性を実証する計画である。以下に,本年度実施した具体的な検討事項,得られた成果等を示す。 ミリ波帯パッシブマイクロスコピーを実現するための計測システムの開発を前年度に引き続き実施した。ミリ波帯熱雑音信号のセンサーである近接場プローブとしては,本研究で提案する,微小スリット開口を有するシリコン製チップを用いた新たなプローブの設計・製作を行った。FIB加工観察装置を利用して微小スリット開口を加工し,高さ5um以下のスリット開口を有するチップの実現に成功した。更に,本チップを用いたプローブの特性評価を実施し,所望の特性が実現されていることを確認した。 プローブで検出された熱雑音信号を受信するための高感度ヘテロダイン受信器の特性評価を完了し,試料温度を低温まで変化させて測定を実施するための試料台及びチャンバーの設計・製作,特性評価を実施した。 以上の開発で構築した計測システムを用いて,測定対象である試料からのミリ波帯熱雑音信号を受信して二次元画像を再構成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
ミリ波帯パッシブマイクロスコピーの検討を行うための画像計測システムの性能向上を計るとともに,本画像計測技術の有用性を実証するため,まず,従来の赤外領域におけるパッシブ計測では画像化困難な低温での画像計測を試みる予定である。その後,温度分布の画像化(画像の定量化),応用の創出を目標に研究を実施する計画である。
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