研究課題/領域番号 |
22360165
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石丸 伊知郎 香川大学, 工学部, 教授 (70325322)
|
研究分担者 |
高橋 悟 香川大学, 工学部, 准教授 (50297579)
田中 直孝 香川大学, 農学部, 准教授 (60324109)
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
|
キーワード | フーリエ分光 / 分光イメージング / 位相シフト干渉 / 空間的位相シフト / 高時間分解能 / ワンショット / 医用計測 / 無侵襲血糖値センサー |
研究概要 |
計測対象の時間的な揺らぎに頑健である、1画像(ワンショット)で分光特性を取得するワンショット小型フーリエ分光方式の研究を進めている。これは、我々が世界に先駆けて提案した結像型2次元フーリエ分光方式の時間分解能を高めるための研究である。これにより、動きを伴う生体組織を計測する、例えば無侵襲血糖値センサーなどの医用計測技術の実現可能性を高めることが可能になる。 本年度は、相対傾斜位相可変フィルタを製作して、実験によりワンショットで分光特性を取得可能であることを確認した。製作方法として、バルク方式とシリコンミラー方式について検討を行った。バルク方式は、光学研磨面を有する2つの部材を、反射面を傾斜させて貼り合わせる方式について検討した。これは、1つの部材に形成した傾斜反射面の一体光学研磨が非常に困難であることから考案した製作方法である。しかし、2つの部材を貼り合わせる際に、相対傾斜と直交方向の傾斜角を、結像条件を満たす0.001deg.以下で貼り合わせることが難しいことが判明した。そこで、シリコンミラー方式について、更に2方式について検討することにした。これは、バルク方式と異なり、シリコン表面の光学的平坦性を用いることにより、光学研磨が不要であることに着目した製作方法である。1方式は、2つの反射面をトーションバーにより結合し、それを相対傾斜角分ねじる構造である。また、もう一方の方式は、溝を形成した基板に2つのシリコンミラーを互いに交差して挿入することにより、2つの反射面に相対角度を設ける方式である。MEMSなどで頻繁に用いられるトーションバー方式では、反射面積が広い(一辺数ミリ程度)であることから、本適用に於いては自重の影響による撓みにより光学的平坦性が保てないことが計算により判明した。そこで、シリコンミラー挿入方式(カード型位相シフター)について設計試作したところ、良好な分光特性を取得することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無侵襲血糖値センサーの実現を目指した、超小型ワンショット分光イメージング装置のキーテクノロジーとなる相対傾斜ミラーを、シリコン方式により超薄型の位相シフター(カード型位相シフター)として実現した。また、血糖であるグルコース濃度の評価にも着手済みで有り、人の血糖レベルである100mg/dl近傍の超薄溶液の濃度を、試験管レベルの分光特性評価実験により計測可能であることも実証することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
試作したカード型位相シフターにより実現可能となった、超小型の高時間分解能ワンショットフーリエ分光イメージング手法を内視鏡へ搭載する可能性について更に検討を進める予定である。経管腔的内視鏡手術は、軟性内視鏡を用いて、口や肛門などの既に有る体の穴を用いた低侵襲手術である。特に、早期の胃がんは内視鏡手術が有効であるが、胃壁を穿孔してしまう恐れがある(約5%)。胃壁を穿孔した場合、急遽、開腹手術に切り替えなくてはならない。また、胃壁へのがんの浸潤度に応じて腫瘍を切除する深さも異なる。そこで、胃壁のワンショット分光断層イメージングによる胃がんの浸潤度計測と、穿孔防止の可能性について検討する予定である。
|