研究概要 |
本研究は,限られたエネルギーにより効率的な温度制御を行う恒温植物ザゼンソウの温度制御機構を,工学および生化学の両面から解析し,その省エネルギー特性を提供するメカニズムの解明を目指すものである.本年度は,MATLAB等のモデルベースシミュレーションツールと電子回路を用いたザゼンソウ発熱機構の解析と数学モデルの考察を検討した. これまでの研究で得られている,ザゼンソウ型制御アルゴリズムを組み込んだ発熱細胞モデルを基本とし,発熱細胞間の熱伝達や同細胞へのエネルギー供給経路やエネルギー貯蔵部分,および外界との熱的相互作用に関する項を付加し,より生体に近いモデルを作成した.ただし,同モデルではその係数の一部(フィードバック係数など)が試行錯誤的に求められるため,同モデルが現実に即しているかどうかの判定およびその係数範囲が示す意義を生化学的に評価する必要がある.また,同モデルには生体調査から得られる熱容量などのパラメータも組み込む必要があるため,ザゼンソウ群生地から採取した生体を用いた熱特性計測用実験系を構築した.同装置は生体のザゼンソウの一部を任意の温度に変化させることができるため,同装置を用いることで生体のザゼンソウにおける各部の熱特性を推定することができる.なお,震災により生体の採取時期に同装置の完成が間に合わなかったため,本年度は同装置による実験を行う事ができなかった.次年度,同装置での実験から得られる結果を実装したモデルにより,より一層ザゼンソウの温度制御メカニズムへの理解が進むことが期待される.
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