研究概要 |
運転行動は一般に、「認知」「判断」「操作(動作)」の各過程を経て発現すると考えられている。これまでこれらの機能を個別に解析・モデル化した例は多いが、統一的な数理的枠組みの下で解析した例はほとんどない。ドライバのミスが原因で発生する事故を予防するためには、「認知」「判断」「操作(動作)」の統合的な理解が不可欠である。昨年度の研究では、人間の判断・操作特性を(連続/離散)ハイブリッドシステムモデルとして表現し、これに基づいてアシストを最適化することで、適切な操作アシストが実行されることをシミュレータ上で確認した。今年度はまず、一人乗りの電気自動車を用いて実車でその有用性を検証した。さらには、運転時における散漫状態の推定等にも取り組み、提案する運転行動モデルの有用性を多岐にわたって立証することをめざした。具体的にはまず,昨年度の研究においてドライビングシミュレータ上で検証を行った運転支援システムを小型電気自動車に搭載し,屋外の走行実験を通じてより現実の走行環境に近い状況で検証を行った.実験の結果,普通自動車と小型電気自動車の運転モデルを比較すると,その速度域や加速性能の違いが運転行動モデルのパラメータの違いとなって現れることが明らかとなった.また,適切なタイミングで加減速支援が作動することを確認し,実車環境においても開発した運転支援システムの有効性がある程度確認された.次に,車内機器操作などの二次的タスクが運転行動に及ぼす影響を定量的に評価するため,運転者の判断に含まれるあいまいさを運転モデルから抽出する手法の開発を行った.具体的には,運転操作の切り替わりを確率的に表現するPrARXモデルを用いて運転行動のモデリングを行い,モデルのパラメータを元に算出されるエントロピの値によって,運転操作の切り替え判断にどの程度のあいまいさが含まれるかを測る方法を示した.実験の結果,機器操作時は通常走行時と比較してエントロピの値が増加することが明らかとなった.
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