研究概要 |
高度経済成長期以降,膨大な数のコンクリート構造物が建設され,既に50年以上の年数を経て劣化が顕在化している構造物も少なくない。これら構造物には,今後も補修を繰り返しながら安全かつ長期間供用されることが求められ,既設コンクリート構造物と補修材料との一体性が長期間にわたって確保されなければならない。既設コンクリートと補修材料との一体性確保の判断には,両材料の付着界面における,せん断付着強度の把握が重要となるが,統一された評価方法が存在しない現状にある。本研究では,曲げモーメント下でのせん断付着強度試験および圧縮応力下でのせん断付着強度試験を各2種類行い,適切なせん断付着強度評価方法の検討を行った。また,付着界面の凹凸性状がせん断付着強度に影響を与えることから,各試験法における母材コンクリート付着界面の凹凸の程度を,無処理,中目粗し,大目粗しの3水準とし,各試験を行った。さらに,せん断付着強度試験では,破壊過程および破壊機構が重要となるため,実験にアコースティック・エミッション(AE)法を適用し,AE-SiGMA解析による破壊進展機構を考察した。その結果,付着界面処理を大きくした場合では,試験法により付着界面で破壊する供試体本数に差が生じ,試験結果の安定性が試験方法により異なった。圧縮応力下のせん断付着強度試験では,付着界面に拘束力が生じるため,せん断付着強度が大きく評価され,さらに,付着界面外で破壊に至る過程がAE法により明らかとなった。一方,曲げモーメント下でのせん断付着強度試験では,試験結果の安定性が比較的高く,付着界面での破壊が確認された。また,AE-SiGMA解析により,せん断型AEイベントが卓越して破壊に至る過程を明らかにした。以上のことから,本研究の範囲内では,曲げモーメント下でのせん断付着強度試験が適切な評価方法であると言える。
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