研究課題/領域番号 |
22360173
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
宇治 公隆 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70326015)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | せん断付着強度 / CFRP格子筋 / 吹付けモルタル / 補修材料 / 付着界面 / アコースティックエミッション |
研究概要 |
高度経済成長期以降、膨大な数のコンクリート構造物が建設された。これらは供用されてから数十年経過するものも多く、今後、適切に維持管理し、安全に供用していくことが求められる。 長期安全性の確保には、既設コンクリート構造物と補修材料との一体性の確保が重要である。なお、付着界面におけるせん断付着強度について、現状、統一された評価法はない。本研究では、これまでの検討から信頼性が高いと判断される二面せん断試験を用い、界面の処理程度とせん断付着強度の関係について検討した。なお、実験では、破壊位置および破壊機構(引張型、せん断型、混在型)を解明するため、アコースティック・エミッション(AE)法を適用し、SiGMA解析をもとに破壊進展挙動を把握した。その結果、凹凸状態を表す指標である平均表面粗さとせん断付着強度は一次関数で表現できることを示した。 また、既設コンクリート構造物の補修に、CFRP格子筋を配置してモルタルを吹き付ける工法を取り上げ、構造物のせん断耐力向上のために配置したCFRP格子筋に作用する引張力が既設コンクリート構造物に伝達されることを模擬したモデル供試体(要素試験体)を作製し、引抜き試験を行った。その結果、CFRP格子筋からモルタル、そしてモルタルから既設コンクリートへの力の伝達挙動をAE法ならびにSiGMA解析により把握し、界面のせん断付着特性がCFRPの剛性や格子間隔によって異なることを明らかにした。 さらに、幅200mm×高さ500mmで長さ2700mmの梁試験体を基本に、CFRP格子筋を試験体の側面に配置した場合のせん断抵抗挙動を把握した。その結果、CFRP格子筋は既設コンクリート構造物中のスターラップと協同してせん断力に抵抗すること、CFRP格子筋が有効に機能するためのコンクリートとモルタルの界面の一体性は終局段階まで十分に確保できることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの検討で、付着界面の凹凸状態とせん断付着強度を二面せん断試験から明らかにでき、また、要素試験体を用いた引抜き試験により、CFRPの配置効果を発揮させるための条件(CFRP格子筋の剛性、格子間隔、界面処理程度、プライマーの有無)を明らかにできた。さらに中規模ながら梁試験体を用いたせん断耐荷試験によりCFRP格子筋のせん断補強効果を明らかにできており、平成25年度の実験を計画どおりに進めることが可能と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
補修モルタルの強度を要因として二面せん断試験を実施し、せん断付着強度と界面凹凸状態のデータを得る。この結果をこれまでのデータに追加し、凹凸性状とせん断付着強度との関係式の適用範囲を拡大する。 コンクリートとモルタルの界面の処理方法、モルタル強度および凹凸性状を要因としてCFRP格子筋を用いた要素試験体による引抜き試験を行い、界面の破壊挙動の検討を行う。試験においてはアコースティック・エミッション(AE)法を適用し、モルタルの強度の相違による破壊面の形成過程を把握するとともに、界面の付着抵抗域の移行特性を明らかにする。 また、要素試験で得られた付着せん断抵抗域の移行特性を解析的に表現する。CFRPの剛性、コンクリートとモルタルのせん断応力ー変位関係を仮定し、要素試験結果との比較検討を行い、AE法で得られるせん断付着抵抗域とも比較する。 さらに、前年度に実施した梁試験体のせん断試験における耐荷挙動およびひび割れ発生、せん断抵抗挙動を解析的・定性的に表現することを試みる。
|