研究概要 |
本研究の目的は、架設後30年を経過し,著しい腐食損傷による桁機能喪失により落橋した活荷重単純合成鈑桁橋を実暴露構造物と捉え、まず初めに,橋梁管理者より提供された鋼桁を用いて腐食劣化した桁の実験供試体を製作し、詳細な板厚減耗量等測定後に耐荷力実験を行い,次に耐荷力解析を行い、それらの結果より腐食した鋼桁の残存耐荷力評価手法の開発及び耐荷力評価することを目指す。本年度は以下の項目について研究を実施した。 1.昨年度に引き続き橋梁管理者より提供された腐食した実鋼主桁を用いて、腐食した桁のせん断実験供試体1体を製作した。供試体製作後に,レーザー変位計測定装置を用いて腐食実験供試体の残存板厚及び初期たわみの測定を詳細に行った。 2.6000kN高性能アクチュエーター実験装置を用いてせん断耐荷力実験を実施した。実験結果(昨年度の実験結果を含む)を詳細に検討した結果,腐食損傷の程度及び腐食形態が鋼桁のせん断耐荷力に影響を及ぼすことが明らかとなった。 3,レーザー変位計測定装置により測定した着目腐食パネルの残存板厚及び初期たわみ等の実測データを用いて,より詳細な有限要素解析モデルを作成し,耐荷力解析を行った。解析では,実験供試体をアイソパラメトリックシェルでモデル化し,弾塑性有限変位理論に基づいた汎用構造解析プログラムMSC MARCを用いて行い,要素は8節点厚肉曲面シェル要素を用いた。詳細な有限要素解析モデルを用いた解析結果と実験結果を比較した結果,本解析結果は腐食部材のせん断耐荷力,変形モード等について,実験結果を精度よく評価できることが確認された。 4.上記解析結果と実験結果を比較した結果,腹板の腐食状況(腐食パタン)及び腐食の進行度(腐食減厚量)が鋼桁のせん断耐荷力に影響を及ぼすことが明らかとなった。特に,水平補剛材上部の腐食が進行し板厚が減少すると,鋼桁のせん断耐荷力が著しく低下することが明らかとなった。 5.腐食が鋼桁の曲げ耐荷力に及ぼす影響を把握するため,橋梁管理者より提供された鋼主桁腐食部材及び新材を用いて、曲げ試験供試体を製作した。実験では2点集中荷重を載荷することによって,実験供試体中央部に等曲げモーメントを作用させ,変位計及びひずみゲージを貼り付け,変位及びひずみの測定を行った。実験結果より腐食損傷の程度及び腐食形態が鋼桁の曲げ耐荷力に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、先ず初めに,腐食劣化した桁の実験供試体を製作し、詳細な板厚減耗量等測定後に耐荷力実験及び耐荷力解析を行い、それらの結果より腐食した鋼桁の残存耐荷力評価手法の開発及び残存耐荷力評価を目指す。次に,腐食損傷の著しい鋼桁の補修・補強方法について検討し、機能回復方法の提案することを目的としている.腐食劣化した鋼桁の残存耐荷力評価については,耐荷力実験及び耐荷力解析によりおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
腐食損傷の著しい鋼桁の補修・回復技術については,機能回復確認実験を行い,効果的な補修・機能回復技術の提案を行う予定である。機能回復確認実験では,腐食モデル桁に種々の補強法を施し,せん断耐荷力実験を行い,如何なる補修工法が腐食鋼桁のせん断耐荷力の性能回復に最適であるか今後検討を行う予定である。
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