電磁界共鳴方式は電磁誘導の原理を基本とし、送受電側とも極めて高いQ値のアンテナ設計を施すことで数mのエアギャップでも高い電力伝送効率を実現する。ところが高Qアンテナは、その周辺に存在する誘電体、導電体或いは磁性体などの外的要因、或いは送受電アンテナの距離や向きによる相互リアクタンスの変化によって共振特性が大きく変化し、安定した電力伝送を実現できない。これを如何に補償するかが課題となる。そこで、相互リアクタンスの変化を補償する方法として、送電側のキャパシタンスを可変コンデンサで調整し相互リアクタンスの変化を相殺する方法、そして相互リアクタンスの変化に伴った共振周波数の変化を電源周波数の調整によって補償する方法について検討した。結果、高い電力伝送効率と安定性を実現する共振応答制御装置を開発し、約30~300mWの電力で動作する直径10cmの試作センサデバイスとの組合せで1.5m程度の実用性能を確認した。また、受電アンテナに近接するコンクリートが共振特性に及ぼす影響を把握することが重要となるため、まず基礎的な検討として100kHz~30MHzにおけるモルタルのフレッシュ性状から凝結に至る比誘電率及び導電率の計測をおこない、その経時的に変化する電気的特性を明らかにした。更に、コンクリートや地盤による誘電損失や磁界暴露による人体への安全性評価をおこなうため、モーメント法・有限要素法・FDTD法の3種類の電磁界解析手法の適用性について比較検討した。結果、本研究が目標としている電力伝送距離、送受電アンテナサイズ、そしてkHzオーダーの低周波帯域における電磁界解析にはモーメント法が最も適していることが分かった。
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