浅瀬や干潟のような水深の浅い場所において,粘土を含む軟弱な底泥上を強い波浪が進行する際に,部分的な含水比減少・せん断強度増加箇所の発生,細粒分が減少するという物性変化が底泥において発生することが確認されている。これらの物性変化は波浪が作用する時に底泥表面に発生する亀裂が大きな要因であり,亀裂の発生は底泥表面に作用する水圧勾配が周期的に変動することが原因であると考えられる。 本研究では,底泥および波浪の条件が異なる波浪作用実験を,亀裂と物性変化の関連性について検討を行った。さらに,使用した粘土試料のレオロジー特性を調査し,波浪作用下における底泥の安定性(亀裂の発生)を評価できる安定解析法を提案した。安定解析により波浪に対する安定の条件から求められる海底地盤表層の含水比は液性限界の1.5~2.0倍の範囲になり、実際の海域の海底地盤表層における含水比と対応していることを示した。 波浪作用実験の結果から,亀裂発生と物性変化に関係があり、亀裂の開閉時に底泥内部の細粒分が分離することを確認した。回転粘度計から求めた底泥の降伏値を強度と考え,円弧すべり安定解析を行って得た安全率は,波浪作用下の底泥の安定性をよく表現することがわかった。さらに底泥の降伏値は、地盤工学において粘土の力学特性を把握する時に用いられる重要な指標である液性限界、練返し粘土の代表的な強度であるベーンせん断強度と明確な関連があることが判明した。
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