研究概要 |
近年の都市部においてヒートアイランド現象による気温の上昇,アスファルト舗装,コンクリート舗装による透水性,保水性の低下など様々な問題が発生している。このような問題を解決する一つの方法として雨水浸透貯留循環システムの設置が挙げられる。雨水浸透貯留循環システムとは団粒構造を有した土の層と貯水タンクを組み合わせた構造を示しており,通常の土よりも透水性および保水性が高いく,気温上昇の抑制,浸透能の向上,土地の有効活用など設置には多くの利点がある。しかし,これまで実用化が先行して降雨量(降水量)に対してどれだけの貯水が可能か,また気温上昇を抑えられるかといったその機構や定量的な検証については行われていなかった。そこで、本年度は、学内に雨水浸透貯留循環システムを設置し、水位、気象情報の観測を行い、降雨とタンク内の水位の関係を調べた。これにより、団粒化層内に貯水される水分も把握することができる。さらに、得られたデータをもとに不飽和浸透解析ソフトで貯水タンク上部を再現し、気象庁から得た過去の降雨データについてシミュレーション4を行って、貯水タンクへの浸透について調べることとした。その結果、降雨量の約66%が貯水タンクに貯水されることがわかり、30%程度が団粒化層に保水されることが明らかになった。また、時間雨量で30mm以上の降雨がある場合に雨水貯留タンクの水位が上がることが得られ、それ以下の場合には、表層の団粒化層に保水され蒸発していくことが推察された。さらに逆解析による雨水貯留タンクシステムの浸透パラメーターを同定し、降雨パターンを変えてシミュレーションを行った結果、タンク内への流出は総降雨量の3割から4割程度であり、降雨が短時間に集中して降る雨、つまり側方への流出が最も多いと思われる雨について最低でも3割から4割の降雨をタンク内に貯水できることが今回のシミュレーションからわかった。
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