研究概要 |
本年度においては,末端氷河が氷河湖に崩落する際に発生する津波の越波による決壊,パイピングによる決壊,および氷河の融解による水位上昇での越水決壊について,水理模型実験により決壊のメカニズム,決壊時の洪水/土石流規模について研究を行った。津波の越波による侵食で発生した洪水/土石流のハイドログラフは複数のピークを有するが,同一水位,同一ブロックの場合には,最初のピークは台形状の堤体でも三角形状の堤体でも同様であるが,二番目以降のピークは大きさやピーク発生の時間は堤体形状や堤体材料の違いで異なった。ハイドログラフは,堤体形状,堤体天端までの水位差,堤体材質,崩落氷河の大きさ,氷河湖の大きさなど,さまざまな要因によって影響されることが示唆された。パイピング現象については,初期水位が高いほど,氷河湖の長さが長いほど,洪水のピーク流量が大きいことが分かった。また,初期パイプの大きさの違いによって,洪水ピークの発生時刻が異なるが,ピーク流量はほぼ同様であった。堤体は侵食によるパイプの拡大により決壊し,種々の条件によってハイドログラフが敏感に変化した。パイプの拡大による管路流れから開水路流れへの遷移も,ハイドログラフに大きく影響する要因であることが判明した。河川堤防の決壊については,その多くが越水と浸透による裏法面の侵食が原因であることから,非粘着性土砂からなる堤体が河川からの越水によって決壊する過程を,種々の水理実験を通してそのメカニズムを明らかにすることに焦点を絞って研究を行った。その結果,不飽和土特有のサクションにより,堤体材料の平均粒径が細かいほど堤体が侵食されにくいこと,したがって堤体の決壊過程を再現するには堤体内の浸透特性を精度良く計算する必要があること,浸透対策,天端の侵食対策によって堤体が決壊されにくくなることなどが明らかになった。
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