研究課題/領域番号 |
22360197
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 一 京都大学, 防災研究所, 教授 (80144393)
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研究分担者 |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346934)
馬場 康行 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283675)
張 浩 京都大学, 防災研究所, 助教 (90452325)
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キーワード | 天然ダム / 堤防 / 洪水 / 破堤 / 土石流 / 氷河湖 / パイピング / 津波 |
研究概要 |
氷河湖の決壊メカニズムの解明およびその決壊によって発生する洪水・土石流規模の予測については、ネパールの山岳地帯の氷河湖現地調査を2回実施して地形情報等を収集し、また、水理模型実験による氷河湖決壊メカニズムの解明と現象を再現し得る数値解析モデルの開発ならびに現地で生じ得る洪水・土石流規模の予測を行うなど、初期の目的はほぼ達成した。一方、河川堤防の決壊メカニズムについては、基礎地盤の有無、堤体材料の平均粒径の違い、越流前の堤体浸透の有無、すべりの有無、対策の有無等について、種々水理模型実験を実施し、開発した浸透モデルの妥当性、新たに導入したサクションの効果、侵食過程の再現モデルの妥当性、対策の有効性等について種々検討を行った。その結果、基礎地盤をあらたに付加した場合、越流前に堤体への浸透がある場合と無い場合の何れの条件でも、開発した浸透モデルは比較的良好に実験結果を再現し得ることが分かった。堤体の侵食モデルについては、河床の侵食速度式にサクションによる見かけのせん断抵抗力を考慮した新たな侵食速度式を提案してきたが、近い将来、粘着性材料の侵食過程を考慮したモデルを構築し、実際の現場への適用も視野に入れるため、非平衡流砂量式を導入して、そこにサクションによる見かけのせん断抵抗力を考慮したモデルを開発した。さらに、堤防法面の安定解析にもサクションの効果を入れた簡易ヤンブ法を新たに開発した。これらのモデルを用いて実験結果の再現を数値解析により試み、比較的良好な結果を得ている。なお、透水係数が比較的大きな一部の粒径材料からなる堤体では、サクションの効果が表れにくい結果となっており、これについては今後さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
氷河湖の決壊メカニズムの解明およびその決壊によって発生する洪水・土石流規模の予測については、ネパールの山岳地帯の氷河湖現地調査を2回実施して地形情報等を収集し、また、水理模型実験による氷河湖決壊メカニズムの解明と現象を再現し得る数値解析モデルの開発ならびに現地で生じ得る洪水・土石流規模の予測を行うなど、初期の目的はほぼ達成している。河川堤防の裏面のすべりを考慮した非粘着性材料からなる堤体の侵食破堤を水理模型実験を実施し、その実験結果を再現し得る数値解析モデルを開発して、河川堤防の決壊のメカニズムについて研究を進めているが、粘着性土砂を含む堤防材料の破堤現象へ、さらに研究を深化する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成22,23年度の研究で氷河湖の決壊による洪水・土石流に関する規模予測手法については、現地調査、模型実験、数値解析はほぼ予定していた研究成果を得ることができた。そこで、氷河湖の決壊現象については一旦研究を終えることとする。ただし、新たな課題が発生した場合は、臨機応変にその課題に取り組むこととする。平成23年度には近畿地方、とくに和歌山、奈良県において、台風12号がもたらした大量の豪雨により深層崩壊に伴う天然ダムが17個形成され、その内12個が洪水期間中に決壊し、5個が今も残存している。このような事象が身近に発生したことは極めて希なことであるので、この現象に研究の重点を置くこととし、天然ダムについては、これらの現地調査に基づいてこれまで開発してたモデルの適用をはかり、対策について検討する。また、河川堤防の決壊については、越流による非粘着性堤体材料の侵食のみならず、すべりによる崩壊現象を組み込むとともに、堤体材料の粘着性についても考慮した河川堤防決壊モデルを構築することに重点をおいて研究を進めることとする。
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