研究課題/領域番号 |
22360197
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 一 京都大学, 防災研究所, 教授 (80144393)
|
研究分担者 |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346934)
張 浩 京都大学, 防災研究所, 助教 (90452325)
水谷 英朗 京都大学, 防災研究所, 助教 (00636756)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 天然ダム / 河川堤防 / 土砂災害 / 洪水災害 / 土石流 / 破堤 / 不飽和 / すべり |
研究概要 |
天然ダムの決壊メカニズムに関する研究については、これまで開発してきた天然ダムの決壊モデルおよび発生する土石流や洪水による侵食・堆積の予測モデルなどを、実験室規模での現象ではなく、ネパールに存在する実際の氷河湖の決壊現象に適用し、下流地域の被害アセスメントを行った。これにより、今後発生が憂慮される氷河湖決壊に対する非構造的対策への寄与が図られた。紀伊半島水害で発生した天然ダムの対策で取られた盛り土構造物の安全性については、基礎的な模型実験を行い、降雨浸透、表面流による侵食、浸透による法面の多段階崩壊といった現象を詳細に計測し、信頼に足る実験データを得た。そして、気相、液相、固相の3相を考慮した浸透モデル、侵食モデル、斜面の安定解析モデルを統合した新たな3次元数値解析モデルを構築し、これを模型実験結果と比較検証し、モデルの妥当性を確認した。なお、有効な対策工については、来年度も引き続き検討して行く予定である。 河川堤防の決壊メカニズムについては、これまで得られた成果を権威あるJournalや国際会議で発表した。特に、この分野で最高の権威が有る国際水圏環境工学会の世界大会で、招待論文として掲載されるなど、高く評価されている。そのほか、本年度においては横越流による決壊メカニズムに焦点を絞って研究に取り組み、2種類の横越流の模型実験を実施した。一つは、横越流による堤体の侵食過程と流出ハイドログラフに焦点を絞ったもので、正面越流時の破堤口の拡大過程とは異なる、流下方向の流れによる侵食が強く影響する拡幅過程が再現され、これによる氾濫流量の簡単な評価モデルを提案している。もう一方の水路は、横越流による破堤で堤内地での侵食が再現できる実験装置であり、本装置を用いて氾濫流のハイドログラフのみならず、堤内地の地形変動等のデータを着々と収集しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然ダムの決壊メカニズムと対策については、数値解析モデルの妥当性の検証が昨年度にある程度達成され、本年度においては、本モデルをネパール国の氷河湖の決壊問題に適用し、決壊による発生土石流・洪水の規模予測、それによる下流地域での洪水・土石流氾濫危険地域の予測、被災人口分布の予測、橋梁等の被災危険性等を示し、被害軽減のための対策に資する成果を得たため、本研究課題についてはおおむね順調に進展したと判断している。 一方、河川堤防の決壊メカニズムについても、正面越流による侵食破堤についてはまとまった成果を権威あるJournalや国際会議で発表して高い評価を得たことや、横越流による侵食過程についても破堤による流出ハイドログラフ等の成果が着々と得られ、大学の発表講演会で成果報告をするなど、おおむね順調に研究が進展していると判断している。ただし、混合粒径材料を堤体に用いた場合や、破堤による堤内地の地形変動や有効な対策については引き続き研究を進めていく必要が有る。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度が最終年度となることから、これまでの研究で得られた成果を取りまとめて、権威あるJournalや国際議で成果を発表したいと考えている。また、河川堤防の決壊メカニズムに関する研究では、正面越流および横越流とも粘着性材料も含んだ混合粒径材料からなる堤体の決壊メカニズムと、堤防決壊氾濫流によるハイドログラフおよび堤内地の地形変動についても精度の高い実験データを得るとともに、実験結果を再現し得るモデルの改良・精練を行っていく必要がある。さらに、堤防の健全度を評価して堤防強化対策について検討し、対策の効果を定量的に評価し得るモデルに改良・精練する必要が有る。以上を踏まえて、本研究の成果を取りまとめる予定である。
|