超音波風速計による地上の熱収支計測とシーロメータによる大気境界層計測を同期させることにより,境界層高さを用いた都市接地境界層乱流の新たなスケーリング則(相似則)を提案することを目的として研究を遂行した. シーロメータを用いた移動観測により,都市域と郊外域で境界層の発達度合いに差が生じることが分かってきたので,平成24年度はさらにこの研究を発展させて,雲の厚さに関する検討を行った. 地上に到達する日射量は上空の雲によって遮られるため本研究では日射の減少率を雲の厚さの指標とした.日射減少率が大きいほど,雲による日射の遮断効果が大きいことを表し,雲の発達の程度が大きいと考えられる.計測データの結果から,郊外よりも都市で日射減少率が大きくなる日が多く見られ,郊外域よりも都市域で雲が発達しやすい傾向にあることが示唆された.そこで都市化による乾燥化と地上からの顕熱フラックスの増大化の影響を個々に評価した.都市域では地表からの顕熱の著しい供給によって対流が活発であり混合層の発達が大きいため,地上の空気は持ち上げ凝結高度を超えた後もさらに高い高度まで持ち上げられ,雲の発達が大きくなることが示唆された. またシーロメーターから得られる後方散乱強度の鉛直方向積算値からも光学的厚さに相当する指標が得られる.シーロメーターの移動観測により得られた都市域と郊外域の光学的厚さを比較したところ,23ケース中17ケースで都市域の値が大きくなる傾向が認められ,都市上空で雲が発達しやすい傾向にあることが示唆された.地上の熱収支計測と境界層高度の同時観測によって,大気境界層の挙動対する都市効果を検討する上で重要な知見が得られたものと考えている.
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