研究概要 |
本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体の協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスはオーベルニュ地方に範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する国内の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する 平成22年度は,先進事分析として、フランスの文化的景観制度ともいえるシット制度について,ル・ピュイ・アン・ヴレイ市におけるシットの見直し事業を対象に,その策定手法,住民参加の意味合い,歴史・景観の価値共有手法について考察を行った.国内では,中山間地の農村である熊本県下益城郡山都町の文化的景観保全調査の基礎調査を行うとともに、平成22年7月『白糸台地の自治とその風景を考える』ワークショップ(WS)を開催,国内外の講師を招聘し,行政職員・コンサルタント・研究者・学生らと.文化的景観の保全と活用について議論を行った。当WSの成果は,報告書を作成・配布するとともに,平成22年11月に名古屋大学にて開催された(社)日本都市計画学会WS「持続可能な中山間地農村観光を考える-日仏の比較を通して-」にて報告等を行った。さらに中山間地域の自治体が所管する土木遺産の活用検討事例を取り上げ,活用事業運営や管理体制について分析を行った.以上の成果は,国内の学術会議や国際会議にて公表した.これと並行して,フランスではオーベルニュ地方にて,国内では熊本県・鹿児島県の中山間地域にて現地調査および聞き取り調査,資料収集等を行った.平成23年度はこれらの調査成果を第31回土木史研究発表会等で公表するとともに,文化的景観や土木遺産を基盤とした観光施策について,事例研究を進める予定である
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