研究概要 |
本研究は,GISによる水・汚濁物質移動解析モデルを発展させることにより,流域の農業地域において流出水(ノンポイント汚染)に対する各種の対策手段の水質保全効果を詳細かつ容易に評価するシステムを開発することを目的としている.具体的には,トポロジーデータモデル型のGISを用いることで容易にデータ取得と利用を行う技術を開発するとともに,地図情報の空間精度や水路内の水量・水質データや農作業等の現場データの反映させ方が評価結果に与える影響を明らかにすることを目標としている.平成23年度は,以下に示す作業や検討を実施した. 1.鳥取県東部の千代川の支流域をモデルの適用対象地域とし,初年度に整備したGISの基礎地図情報から,それぞれの事物のトポロジー情報を取得する方法を検討・構築し,これらの情報を用いてGIS上で利水配分および排水集積を計算していく手法を構築した.現在の情報精度では流域境界および流路の接続性の認識に課題が残ることが確認された. 2.フルセットの入力データを利用した場合の再現精度を確認した.作成した方法論を対象流域で適用し過去の実績値や観測値と比較し,排水量,排水路の水質が再現できているかをチェックしたところ,水量については精度良く,水質については概ね再現できることを確認した. 3.これまでの観測結果から,農地管理や農作業時期による流出水の水質特性を整理し,農作業時期別の現場データの取り方等が流出負荷量や水質の推定結果に与える影響について検討を開始した.予備的な検討として期間別の総負荷量の観点から検討を行ったところ,農作業イベント別に水質の変化が大きいことが期間別の負荷量算定に大きな影響を与えることを確認できた.
|