研究課題/領域番号 |
22360220
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
名和 豊春 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (30292056)
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研究分担者 |
胡桃澤 清文 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40374574)
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50436333)
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キーワード | 乾燥収縮 / 収縮低減剤 / 耐凍結融解抵抗性 / C-S-H / ^2H NMR / ^<29>Si NMR / サーモポロメトリー / 実機製造試験 |
研究概要 |
本研究の目的は、凍結融解作用を受けると著しいスケーリングを生じさせるため寒冷地での使用に注意が必要であった収縮低減剤の凍結融解抵抗性を改善できる新規の収縮低減剤を創製するものである。平成23年度において得られた成果は以下に列挙される。 (1)乾燥収縮低減メカニズムの解明とモデル化 ^2H NMRによる微細空隙中の水分の動的存在状態および^<29>Si NMR、サーモポロメトリーによるC-S-H構造の詳細解析を通じて、収縮低減剤の収縮低減メカニズムの解明を図った。その中で、収縮低減剤のC-S-H中の存在場所および水分子の運動性への寄与を明らかにするとともに、C-S-Hの乾湿繰返しによる構造変化の原因としてC-S-H中のシリケートモノマーの存在を明らかにすることができた。特に、細孔壁表面と水との相互作用を導入したサーモポロメトリーの測定原理の高度化により半径2nmのごく微小細孔までの測定に成功した成果は大きく、以上の結果に基づいて、熱力学に立脚したセメント硬化体中の吸脱着モデルおよび乾燥収縮モデルの構築を図ることができた。 (2)収縮低減剤の分子構造の最適化 収縮低減剤の存在場所に関する実験結果に基づき、昨年度とは高分子のサイズを変更し、分子量および分子構造や官能基の種類・比率を変えて材料開発を進め、数十種類の合成した高分子について昨年度と同様のモルタルによるスクリーニングを行い、2種類の高分子を選定した。 (3)新規の合成高分子の収縮ひび割れ抑制と凍結融解抵抗性の向上の検証 選定した高分子について昨年度と同じコンクリート試験を実施し、1種類の高分子について、収縮ひび割れ抵抗性および耐凍結融解抵抗性を満足することを実証した。レディーミクストプラントでの製造実験でも室内実験と同じ結果を得ることができ、収縮低減性能と凍結融解抵抗性能の両方を具備する収縮低減剤の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-S-H構造の詳細な解析に基づいて研究開始2年目て、本研究の目的てある従来の乾燥収縮低減剤が抱える凍結融解作用を受けると著しいスケーリングを生じるという問題点を克服できる新規の収縮低減剤を創製に成功した点では、当初の計画以上に進展しているといえる。しかし、乾燥収縮の低減メカニズムやそのモデル化は当初の計画通り遂行できたが、耐凍結融解性の向上に関するメカニズムの解明か不十分であった点を考慮するとおおむね順調に進展している段階であると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
より効果的な収縮低減剤の開発には、乾燥収縮低減モデルおよび耐凍融解抵抗性モデルの構築および統合化が必須である。前者のモデルの高度化のためには、C-S-H粒子間に作用している相互作用力として、毛管張力および表面エネルギーを考慮していたが、細孔壁面と細孔中水分との相互作用である表面エネルギーのより詳細な解析が必要であることが判明しつつあり、最終年度である本年度で検討を進める予定である。また、凍結水量と凍結・融解時の膨張挙動とが一致しないことから、微細空隙での氷晶の生成とそれによる膨張圧の発生について熱力学的見地からの考証が必要であり、これについて研究を進め乾燥収縮低減モデルおよび耐凍結融解抵抗性モデルの構築および統合化を図る予定である。
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