研究課題/領域番号 |
22360221
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原田 幸博 千葉大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10272791)
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研究分担者 |
江波戸 和正 関東学院大学, 工学部, 助教 (70568766)
島田 侑子 千葉大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90586554)
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キーワード | 鋼構造 / 耐震補強 / 柱梁接合部 / 方杖 / ボルト接合 |
研究概要 |
1.方杖部材を取り付けた鉄骨架構の構造解析モデル構築 方杖部材を有する建築鉄骨架構の構造解析においては、柱・梁・方杖部材を線材としてモデル化するのが一般的である。しかし、研究代表者・分担者が提案しているような柱梁接合部ならびに方杖端部接合部が全て高力ボルト接合による半剛接合である場合には、通常の線材置換モデルでは部材どうしの接合部の構造安全性を検討するための情報が得られず不十分である。そこで、高力ボルト接合部周りの局部挙動を表現する要素バネを用いたモデル化(Component model)を試みた。その結果、このモデル化によって既往の載荷実験や新たに実施した有限要素解析結果から得られる接合部周りの局部挙動を表現できることが確認できた。 2.エネルギー吸収能力に富んだ制震方杖部材の提案 既存建築鉄骨架構を耐震補強するために柱梁接合部周りに方杖部材を後付けする場合、一般的に方杖部材は周辺部材に比べて相対的に剛性・耐力が高いため、大地震時には方杖部材は弾性に留まり主架構の梁・柱部材に塑性ヒンジができるメカニズムが形成されることになる。しかし、建物を長期間にわたって使用する可能性を考えるならば、主架構に塑性化による損傷を生じさせることは必ずしも好ましくない。もし、方杖部材を主架構に先立って降伏させることが可能なら、その結果として主架構に発生する応力が抑制され主架構の損傷を防ぐことができる。そこで、剛性・耐力を容易に調整可能な「制震方杖部材」を新たに提案し、その実現可能性を数値シミュレーションと部材単体の引張実験で検証した。この「制震方杖部材」は、通常の形鋼に孔開け・切削加工を行うだけで容易かつ安価に製作できるもので、有効な耐震補強構法となる可能性を有していると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度中に、(i)方杖付き架構の大規模有限要素解析モデルの作成を完了している、(ii)新たに提案するエネルギー吸収能力に富んだ方杖部材の試作と部材単体の載荷実験・数値シミュレーションを実施済みであるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に試作と部材単体の性能確認実験を終えた新たに提案する方杖部材について、今年度は(i)同方杖部材の剛性・耐力評価手法の確立と最適形状の提案、(ii)それを架構に組み込んだ場合の性能を確認するための載荷実験を実施する予定である。なお、(ii)の載荷実験は、電力供給状況・節電要請などの事情によって載荷装置の運転が困難となる場合には実施できないため、その場合には大規模有限要素解析による数値シミュレーションに代える予定である。
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