研究課題/領域番号 |
22360224
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田村 哲郎 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (90251660)
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研究分担者 |
片岡 浩人 株式会社大林組技術研究所, 環境技術研究部, 上席研究員 (40393590)
野澤 剛二郎 清水建設株式会社技術研究所, 総合解析技術センター, 研究員 (10574030)
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キーワード | 建築構造 / 耐風設計 / CFD / LES / 実在都市 / 流入変動風 / 地表面粗度 / 都市キャノピー |
研究概要 |
本年度は、キャノピー内風特性の観測データを整理し、LES(Large Eddy Simulation)計算値との比較から計算精度を確認するとともに、周辺市街地の複雑形態に対する風の特性を解明した。 (1)風観測データの整理と気象モデル予測値との対応の吟味 風観測データを整理し、気象モデルWRFあるいはWRF-LESによる予測値との対応から、気象モデルの接地境界層における予測精度の限界と、LESの必要性を確認した。また、WRF-LESの解析結果から建築スケールのLESへ接続する方法を検討した。 (2)他の計算モデルから得た鉛直プロファイルを用いる流入変動風の生成法の提案 広域の市街地や大規模地形による接近流への影響ができるよう、比較的計算負荷の小さいRANSで全体の気流分布を求めた上で、着目する建物周辺気流のみLESで解析を行って風荷重を評価すること方法を提案した。RANSによって得られた乱流統計量に見合った流入変動風を、LESの境界で与える必要があり、ここではその方法として比較的新しいSEM法を用いた。 (3)各種乱流境界層のPIVデータに基づく流入風の設定と地形の影響評価 PIVデータベースに基づき、各種地表被覆状態に対するCFDのための流入風を作成した。境界層タイプの乱流構造を検証するために、その基本モデルである地形の影響評価を行った。 (4)種々の粗度レベル上およびキャノピー内の風の空間構造の把握 都市細密データ・GISデータを用いて再現した都市モデル上空で発達する気流分布のLESによる計算結果を用いて、建ぺい率、粗度密度、建物高さなどの各種粗度パラメータと、都市キャノピーの三次元空間での風の構造との関連性を解明した。また、都市の地表粗度評価へのLESの適用性を示した。 (5)周辺市街地の形態変化と風の特性の変化のLES計算に基づく把握 東京丸の内地区を対象にここ10年間の市街地の形態変化を把握し、それぞれの形態でのLESを実施し、風の特性への影響を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計算の並列化効率が格段に向上し、計算結果が得られる時間がかなり短縮された。また、複雑な形態を表現するための非構造格子に基づく解析法の導入が早く終了し、計算モデルにおける格子解像度の向上が効率的に行えるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、CFDの適用も耐風設計の実用段階に入る。市街地の風の乱流場に対する解析において十分な精度であることが確認されたことから、さらに密集都市域のLESを想定して流入変動風を作成し、ある特定の建物を対象にして、風圧力、風力、振動応答をLESで計算し、風洞実験データおよび観測データと比較から必要計算解像度などの適切な計算条件を明らかにする。また、LES計算結果に基づき、従来型の耐風設計を試みる。
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