日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」は,2010年に大幅な改訂版が刊行された。ここでは,柱・梁のせん断と付着,鉄筋の定着,耐震壁の付帯ラーメン規定・開口低減率など,最新の成果を取り入れた大幅な改定が行われた。しかし,フラットプレート構造に関する規定は,全く変更されなかった。 日本の規準が柱側面のねじれ抵抗を高く評価する点は合理的である。しかし,この設計法の根本的な問題点は,柱まわりの曲げモーメント,せん断力,ねじれモーメントを単純合計する点にある。たとえば通常の梁の強度は,曲げ強度とせん断強度のうち低い方で決定される。つまり,これらの性能が同時に発揮されるという考え方には力学的に無理がある。 本研究では,種々の実験を行い,スラブの変形状態を詳細に測定した。その結果,パンチングシア破壊に関する曲げ,せん断,ねじり抵抗を分離し,耐震性能に及ぼすせん断補強の効果を定量的に把握することに成功した。柱の境界面からスラブ厚さの約2倍程度までの領域がねじれに抵抗することも明らかになった。これらの知見に基づいて新たな強度計算式を提案した。既往の実験結果にもこの提案式が適用できることを確認した。
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