本年度は、建築履歴データを解析するための理論を整理することに注力した。具体的には以下のように研究を展開した。 a.文献調査や、ブレーンストーミングを通じて、ライフサイクル・ヒストリー・モデルを作成したうえで、ライフサイクル各段階で、建築及びその構成設備の運転・運用、点検、修繕、改修に関して、どのような業務・活動が発生するかを整理した。これをふまえ、これらの業務・活動において必要とされる知識を抽出することにより、既存建築ストックの持続的活用のために必要となる知識を抽出した。 b.履歴データをもとに知識が獲得されるまでのプロセスにおいては、特定の関心に応じて意味のある情報が読み取られ、それらの意味情報が組み合わせされて、知識が構成されていくと想像される。本研究においては、これらの過程が、履歴データ(生データ)→抽出された意味情報→意味情報の変換・組み合わせ→知識獲得というプロセスであるという仮説をたて、その仮説が妥当であるかを検討した。 c.以上のような作業・検討を踏まえ、知識を抽出するために必要な履歴データの内容・形式について整理することを試みた。これらの研究展開を踏まえ、整理された建築履歴データを解析するための理論が。実効性を有するかを検討するため、上記c.のように建築履歴データを整理・保存しておけば、ライフサイクルの各段階において必要に応じて必要な知識を抽出することができるか否かを、ケーススタディにより検証することを試みた。
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