研究課題/領域番号 |
22360249
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門内 輝行 京都大学, 工学研究科, 教授 (90114686)
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研究分担者 |
山崎 正史 立命館大学, 理工学部, 教授 (40109038)
守山 基樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70534303)
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キーワード | コミュニティ・ガバナンス / 街並み / 景観形成 / 活動理論 / 集合的活動 / ソーシャル・キャピタル / 社会ネットワーク / 記号論 |
研究概要 |
本研究の目的は、住民・行政・事業者・専門家等が協働する「コミュニティ・ガバナンス」(住民を含む関係主体による対話型のまちづくり)に焦点を結び、現代都市の文脈において魅力的な街並みの景観を形成する方法論を構築することである。 敷地主義に根ざした孤立した建築行為の集積からもたらされる景観破壊が進行している現代都市において、互いに他を活かし合う魅力的な街並みを形成するためには、多主体が集合的活動を展開することが不可欠である。そこで、Y.エンゲストロームの「活動理論」(主体、対象、道具、コミュニティ、ルール、分業の6項目の相関システムとして活動を捉える)に注目し、コミュニティ・ガバナンスに基づく街並みの景観形成の方法論を探求してきた。具体的には、京都市修徳学区、京都・三条通りなどを事例として取り上げ、街並みの景観形成とコミュニティのエンパワメントをめざしてきたのである。今年度の主な研究成果は次の通りである。 1.街並み景観の定点観測:全方位カメラを用いた現地調査を継続的に実施し、景観の変化を抽出するとともに、変化の要因について解読を進めた。 2.景観デザインの道具の開発とデータベースの構築:Sketch Up、CityEngineを用いた3DCGなどの道具の開発、地理情報システムや知識工学を用いたデータベースの構築を進めた。 3.ワークショップによる街並みルールの探求:戸建て住宅の実事例を対象としてワークショップを行い、通りや町の個性に対応した街並みルールのあり方を探求した。 4.コミュニティづくりの推進:景観まちづくりには、コミュニティづくりが欠かせない。本年度は、修徳自治連合会を対象として、人と組織のつながりを調べる社会ネットワーク分析を行い、ソーシャル・キャピタルの実態を把握した。 5.地域景観づくり協議会の設置:本研究の蓄積を活かして、「修徳景観づくり協議会」(京都市市街地景観条例の基づく組織)の設置を支援した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの2年間の研究の結果、3DCGや全方位カメラなどを用いた街並みデザインの媒介的道具の開発、Y.エンゲストロームの活動理論に基づく街並みの景観形成活動のモデル化、ソーシャル・キャピタル(人と組織のつながり)の社会ネットワーク分析などを行い、コミュニティ・ガバナンスに基づく街並みの景観形成の実践を進める方法論を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の最終年度を迎える。これまでの研究によって構築した街並みの景観形成の方法論を活用して、景観まちづくりを実践的に推進する。 京都市市街地景観条例が改正され、2011年4月から市民の景観形成活動を支援する「地域景観づくり協議会」を設置できることになった(建築行為をする者は事前にこの協議会の意見を聴くことが義務づけられる)。本研究の研究成果の一つとして、この仕組みを利用した「修徳景観づくり協議会」を設置できたので、この仕組みを活用して街並みデザインのワークショップを行い、街並みのルールづくりやコミュニティのエンパワメントを積極的に進める。また、この方法論を、他の事例(京都・三条通りなど)にも適用し、コミュニティ・ガバナンスに基づく街並みの環境形成の方法論の有効性を検証する。
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