研究課題/領域番号 |
22360250
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神吉 紀世子 京都大学, 工学研究科, 教授 (70243061)
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研究分担者 |
宮川 智子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30351240)
小浦 久子 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30243174)
工藤 和美 石工業高等専門学校, 建築学, 准教授 (40311055)
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キーワード | 文化的景観 / オーセンティシティ / まちづくり主体 / データベース / 原風景ヒアリング法 / 農村集落 / ライフストーリー / ツーリズム |
研究概要 |
本研究の実施は、大別して2つの取り組み「1.文化的景観保全に取り組む事例地を通じた実験研究」「2.国内外むけの研究集会の開催による検討の促進と成果発信」からなる。1については、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の沿道旧集落・旧市街地である、近露、湯浅、兵庫県南西部の文化的景観モデル事業地、いなみ野ため池群を中心に作業をすすめ、海外事例としては、ボロブドゥール(インドネシア)、バンコク郊外(タイ)の作業をすすめた。これらの事例研究から得られた結果を年度内に論文や研究集会での発表等にまとめることができた。また、日本建築学会農村計画委員会の編集による書籍「未来の景を育てる挑戦-地域づくりと文化的景観の保全」(技報堂出版、2011年8月)の執筆陣に加わり、その中で「動的オーセンティシティ」の概念の提示とその考え方についての論説を発表した。以上の論文・発表・出版などでは、事例ごとの検討としてまとめを行った。住民・まちづくり主体がもっている景観保全に関係の深いまちづくり活動の詳細な取り組み履歴の意味を、ヒアリング成果と地域空間の変化履歴とをあわせて考察することで、地域に変化が生じるなかでも真実性が将来につながるようにおのずから配慮・考案してきた経過を読み取ることができた。以上から、事例地における動的オーセンティシティの読み取り方について、一定のアプローチ法を形作ることができた。以上から、概念の一般化にむけた総合的な議論に着手したところである。2については、8月に日本建築学会大会研究協議会(農村計画)に参加し、研究者間での事例紹介と議論を行った。またこれとは別に、事例地において、住民・まちづくり主体も参加するかたちでの研究集会の開催を企画し、事例検討で得られる動的オーセンティシティの読み取り内容を実地に報告し、かつ、さらに意見交換を進めつつ発信をしていく方法として、集会開催プログラムそのものを検討し、プログラムの基本的構成を案出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画には大きくわけて2つの取り組みがあった。「1.事例地を通じた実験研究」としては、当初予定の国内・国外事例地での作業が進捗したものから、年度内に事例地ごとの特色にそったまとめ方をしながら論文としてまとめ、また、研究集会で発表し、事例ごとに可変的な真実性(動的オーセンティシティ)が潜在しているとみられた地域組織の取り組み履歴等を分析する議論を行った。「2.研究集会の開催による検討促進と発信」については、日本建築学会農村計画委員会の研究協議会の場を活用できた他、事例地において1.に関わる住民・まちづくり主体も参加する会を主催し、文化的景観の事例地での集会を通じた発信方法を試行した。
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今後の研究の推進方策 |
事例地に即した作業は一定の蓄積をみてきたので、24年度には事例から得られた「動的オーセンティシティ」の総合的な検討を達成して、この研究で提示している新概念の明確化と「原風景ヒアリング法」の意義の一般論を得たいと考えている。また、文化的景観の保全は国際的な議論の対象でもあり、総合的な検討のためにも、海外の研究者との意見交流の場をもつことを通じて、議論の洗練を図る予定である。
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