研究課題/領域番号 |
22360253
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
蟹澤 宏剛 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00337685)
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研究分担者 |
安藤 正雄 千葉大学, 工学部, 教授 (80110287)
秋山 哲一 東洋大学, 理工学部, 教授 (30111917)
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キーワード | 建設技能者 / 職業訓練 / 徒弟 / CITB / CSCS / 就労履歴 / Levy / Grant |
研究概要 |
技能者の不足が深刻化している。その主要因は、震災復興の特需によるというみかたもあるが、今のままでは、中長期的にも問題解決の糸口はない。なぜなら、高齢化が大きく進み、若手が非常に少なくなっているからである。建設産業が受注産業、一品生産であるが故に抱える雇用の脆弱性や継続的職業訓練の困難性、キャリアパスの不明確性、不良不的確業者や不法就労者の存在などの問題は、世界共通である。問題解決には、労働力の流動性を前提とした、(1)漏れのない社会保障システムの確立、(2)(業界共通の)能力評価手法の確立、それに対応した(3)教育・訓練方法確立、などが必要である。そのためには、まず、(1)正当な労働者の確認方法の確立(ID登録と本人確認の仕組み、(2)就労履歴を中心としたキャリアの登録、および、(3)制度の運営に必要な基金が必要で、さらには、(4)漏れのない徴収の仕組みや、(5)不正がおこなわれにくい給付の仕組み、が必要である。しかしながら、今の日本には何もない。 本研究は、諸外国の制度から日本で構築すべき制度や仕組みのヒントを得ることを目的としており、本年度は英国を中心に研究をおこなった。英国は、ギルドによる徒弟教育の歴史があるが、1970年代には「英国病」といわれる景気低迷や高失業率を経験し、80年代に教育と職業訓練制度の大きな改革がおこなわれている。その基本は、保護から競争への移行、民活であるが、一方でNVQという全産業に共通の職業能力評価基準を整備し、制度の乱立や質の低下を防ぎ、客観的活公正な評価を可能としている。これは参考にすべき大きなポイントである。ただし、建設の労働市場は流動的であるので、適正な評価のためには、労働者個々の的確な就労履歴の把握が必要であるが、CSCS(Construction Skills Certification Scheme)という、労働者のIDと就労履歴、保有資格などを登録する仕組み1995年に導入され、2012年3月時点で174万にも及ぶ人が登録されていることがわかった。また、徒弟の明確な位置づけにより新卒入職者の訓練制度が確立していること、その費用に関しては漏れのない賦課と公平な給付の制度が、業界団体であるCITB(Construction Industry Training Board)により構築されていることなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国においては昨年に引き続き調査を継続しているが、この研究により実際の政策立案者とのパイプが出来、より詳細な事項について情報交換が可能となった。本年は、労働組合や中小の建設業における運用実態についても解明することが出来た。英国においては、要である賦課金の漏れなき徴収方法について解明することが出来た。 また、就労履歴登録のスキームについてもより詳しく実態を把握することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
韓国については、複数の大学と政策立案者とのパイプが確立しているので、今後、逐次運用状況の確認や問題の発生状況、あるいは、改正の方向性等についても把握可能な体制が確立している。英国については、現業の側の認識や技能労働者個々人の状況が不明であるので、追加の調査等が必要である。米国については、東海岸地区では詳細な調査が可能な体制が整ったが、ユニオンの活動が相対的に低い西海岸の状況は把握できていない。ただし、本研究は、日本のあるべき制度設計を探るものであるので、問題点の抽出やその解決策の考察については、現在の調査対象で問題があるわけではない。
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