研究課題/領域番号 |
22360262
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
益田 兼房 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 客員研究員 (50313317)
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研究分担者 |
藤井 恵介 東京大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50156816)
ジグヤス ロヒト 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 教授 (70573781)
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キーワード | 災害 / 世界遺産 / 保存修理 / 保存理念 / 国際比較 |
研究概要 |
最近の東アジアでの建築史学の国際的共同研究の進展にあわせて、文化遺産保存学分野での保存修復の手法や理念での国際的な共通理解の形成が大きな課題となっている。本研究の目的は、世界遺産という国境を越えた枠組みに対応して、組積造建築などの災害後の脆弱性克服という共通課題に対する欧州・南米・南アジア・東南アジア・東アジアでの文化遺産保存修復事例に着目して現地調査に基づく比較考察を行い、1994年の国際的合意文書「オーセンティシテイに関する奈良ドキュメント」が提起した価値評価の意匠材料技術等の項目と関連して、東アジアや日本での木造建築遺産の特質や保存手法に基づく保存修復理念を世界の中で検討考察するものである。 今年度の調査研究では、2011年3月11日の東日本大震災により東北地方一帯の文化遺産に津波等による被害を受けたが、世界遺産となった平泉中尊寺は地盤が良好で大きな被害がなく、次の南海東南海地震での被害が懸念される京都奈良、及び沖縄の木造世界遺産を中心に、現地調査や発表を行った。 海外調査研究としては、フィンランドで開催の国際イコモス文化遺産防災国際学術委員会ICORPに出席し、日本の木造文化遺産建築の防災に関する発表を行い、世界各地での文化遺産防災に関する情報収集と研究交流を行った。ペルー及びメキシコで、近年の地震災害からの復旧保存修復の調査を石造等教会群について行った。これらは可能な場合には、現地で事業担当者や学識経験者専門家等からの聞き取りや、必要に応じて文献資料等の収集や写真撮影等の作業を行った。 また、2012年3月28日には、調査者等の参加を得て、日本イコモス国内委員会憲章小委員会主査の藤井恵介東大教授を中心に東京で研究集会を開催した。ここでは、スペイン・韓国・日本の具体的な保存修理事業の実態を各国の関係者が発表し、ベニス憲章の理念等とともに相互の共通点と相違点を討論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内の世界遺産では、世界最大級のM9であったにもかかわらず、東日本大震災の大きな影響はなく、むしろ次の大地震が懸念される、世界遺産集中地域である関西の国宝重文建造物の保存状況を中心に、調査を行うことにした。この地域の世界遺産の建造物では、文化遺産保護が始まった19世紀以来あまり大きな地震被害が無く、阪神大震災でも近代の洋風建築を中心に被害が大きかったが、伝統木造建築では直接の被害は少なかった。このような、調査対象の一部変更はあったが、おおむね順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度に当たるため、今年度に引き続き国内での現地調査を継続すると共に、海外では地震帯にある中南米地域の世界遺産の保存修復状況の把握、またその植民地宗主国であったスペインや、保存理念形成に大きな影響を与えてきたフランスやイタリア等での現地調査と情報収集を行い、また国際イコモス研究集会等において論文発表や情報交換をして、研究の促進を行う。
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