研究課題
磁性量子ドットの集合系において、個々の磁性体の磁気秩序は基本的には擬0次元体として統計力学的アプローチにより取り扱われるが、一方でその近傍にスピン偏極した電子系を配置することが可能であると、スピン偏極した電子系を介したスピン相関により、その磁気的臨界挙動が大きく変調されると期待される。このことは、スピン相関を外的に顕在化させることで、量子系の磁気デザインが可能であることを意味する。本研究では、磁性量子ナノ構造と半導体とのヘテロ構造において、円偏光スピン励起手法を利用した磁性制御の可能性について探求することを目的とする。本年度は、(1)強磁性ドットのGaAs(001)上への成長、(2)AlGaAs/GaAs/AlGaAs量子井戸構造の作製と円偏光照射によるスピン偏極電子系の形成、について研究を実施した。具体的には、フェリ磁性転移温度(Tc=858K)を持ち化学的にも安定なマグネタイトドットと強磁性コバルトドットのGaAs(001)上での形成を試み、原子問力顕微鏡によってドット形状の評価を行った。その結果、マグネタイトにおいては薄膜形状がより安定となりドットを形成することができなかった。一方、コバルトの場合にはドット形成が確認された。さらに、半導体MBE法により成長したAlGaAs/GaAs/AlGaAs量子井戸構造に対して、円偏光を照射し、光学遷移の選択則に基づいて励起されたスピン偏極電子のスピン緩和を時間分解カー効果により評価した。その結果、室温において、約50ピコ秒のスピン緩和時間が見積もられた。現在、上記の知見に基づいて、コバルトドット/AlGaAs/GaAs/AlGaAs量子井戸ヘテロ構造の作製と円偏光照射下での磁気特性の変調効果についての調査に着手している。
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Journal of Applied Physics
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Physical Review Letters
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