研究概要 |
窒素ラジカル支援真空蒸着法に斜め堆積法を適用し,微絨毛状のナノ構造を有する窒化インジウム(InN)薄膜を作製した.作製膜において,波長680nmで最大の透過率変化(ΔT)約40%を示す,吸着誘起型エレクトロクロミック(AiEC)現象を確認した.AiEC繰返し耐久試験の結果,ΔTの値は色変化の繰返しに伴い徐々に減少し,36000回の繰返し実験後には,試料がほとんど透明となった.初期の色変化量が半減するまでの繰返し回数は,2万回のオーダーであった.AiEC繰返し実験後の薄膜試料をSEM観察した結果,InN柱状晶の表面に,10nm程度の微小な析出物が確認された.XRD実験から,この微小析出物が水酸化インジウム(In(OH)3)であることがわかった.水溶液を乾燥窒素ガスでバブリングさせずにAiEC繰返し実験を行うと,数百回程度で急激に透明化した.このことから,電解液中の溶存酸素が,有力な劣化要因であると考えられる. 微絨毛構造化InN薄膜を色変化層とするエレクトロクロミックセルを試作した.対極のITOが平滑表面であり,InN薄膜より比表面積が小さいため,十分な色変化を起こすためには,InNに樹脂によりマスクし,面積を制限しなければならなかった。 また,酸化スズ(SnO2)薄膜を反応性スパッタリング法により作製し,InNと同様のAiEC現象を確認した.AiEC動作波長は,330nmを中心とした近紫外領域であり,±1Vの分極において,最大7%の透過率変化を示した.
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今後の研究の推進方策 |
研究1:InN膜のAiEC長寿命化のためには,溶存酸素によってInNがIn(OH)3化する反応過程を解明するとともに,この反応を防ぐ手法を開発する. 研究2:ITO極の比表面積を高めるため,InNと同様,斜め堆積法による微絨毛化の適用を考える. 研究3:他のn型縮退半導体特性を有する物質について,AiEC現象の有無を調査する.
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