研究概要 |
本研究では、最新の研究成果を取り入れて3次元の相分離・規則化組織を解析する有効な手法の確立を進め、同時に理論的な観点からの解析も行い、組織学的観点から相分離・規則化過程を明らかにすることを目的としている。今年度は、規則格子反射の暗視野像の傾斜シリーズを取得する電子線トモグラフィー技法を発展させるために、3軸で試料結晶方位調整が可能な電子顕微鏡用試料観察ホルダーの開発を進めた。既設のオメガ型電子エネルギーフィルターを装着した日本電子社製透過電子顕微鏡(JEM-3200FSK)用に、傾斜軸(x軸)に垂直なy,z軸を中心にそれぞれ±7度、±5度の範囲で試料方位を調節する機能を有する試料ホルダーを設計して製作した。このとき、x軸傾斜範囲が土70度以上を当初目標としたが、対物レンズ周辺の構造を詳細に調査した結果、x軸傾斜について物理的な制限が生ずるのを避けることができ試料の全回転が可能となった。Fe-Al-Ni合金の相分離組織の3次元解析については、まず本試料が強磁性体であり、試料体積を少なくして安定した傾斜シリーズを得るために、微小薄片としてメッシュで固定する手法を確立した。その結果、973Kで0.75h,96h熱処理を施した試料について、3次元再構築像を得ることに成功した。Ni-Mo合金の規則ドメインについても同様な3次元再構築を行い、ドメイン境界の結晶方位についての知見を得た。さらに、特にFe-Al-Ni合金の相分離組織をターゲットにして、相分離と規則化の両方を考慮したTDGL方程式をもとに、時間発展に関する理論面からの検討も進め、まずこの合金系に対応するモデル状態図を構築して、熱処理パラメータの選定を行った。
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