本研究では3次元の相分離・規則化組織を実験解析する有効な手法の確立を進め、同時に理論的な観点からの解析も行い、組織学的観点から相分離・規則化過程を明らかにすることを目的としている。昨年度に引き続いて、1173 Kで1日間焼鈍した後に973 Kで熱処理を施したFe-14.3 at%Al-10.3 at%Ni合金の2相共存状態(不規則A2相+規則B2相)について、B2初期析出粒子内部に生成したA2相に加えてA2母相中に析出した球状のB2析出粒子ついて、結晶方位を制御した電子線トモグラフィー実験を中心に解析を進めた。球状のB2析出粒子の直径は焼鈍時間の1/3乗則に従って成長する一方、体積分率は20hまで増加した後に一定となった。電子線トモグラフィーで求めた体積分率を考慮してEDX組成分析を行ったところ、母相に埋め込まれた球状粒子については粒子内部の組成を決定できる事を明らかにした。この結果は、電子線入射方向の平均値でしか求められていなかった従来のEDX組成分析の限界を打ち破るものであり、電子線トモグラフィーとEDX組成分析の組み合わせは今後広い応用が期待できる。一方、規則度と組成のカップリングを考慮したTDGL型速度方程式に基づくFe-Al-Ni合金の(A2+B2)相分離組織の時間発展のシミュレーションを進め、二段熱処理によるB2粒子内部の相分離過程ならびに母相での析出過程の両方のプロセスを再現する事に成功した。B2粒子内部でのA2相の形成は、初期において3次元的に入り組んだまだら組織を呈し、徐々に粗大化していく様子が示され、電子線トモグラフィーで明らかにした3次元組織発展とよい対応が得られた。
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