研究概要 |
本年度行った主要な研究は、空洞ナノセルの形成条件の確立、充填ナノセルの作製、そしてII-VI化合物半導体を対象とした照射特異挙動の探索である。 【空洞ナノセル】GaSb, InSbそしてGe上にナノセル格子を作製した。InSbで100nm間隔で2.5以上のアスペクト比をもつ2次元正方格子を作製することに室温で成功した。さらにイオンドーズ、イオンフラックス等の作製条件についても詳細にした。この化合物半導体の場合、低温では良い結果が得られなかった。形成された点欠陥の移動度が小さいためだと考えられる。GaSbでは、低温で良い結果が得られ、30nm間隔の格子を作製することができた。Geでは表面をあらかじめ非晶質化した場合と、そうでない場合の二通りをおこなって、セル構造の発達過程を評価した。非晶質処理を行った試料は行っていない試料に比べ、二次ボイドの発生・成長が著しく、これによって規則性が消失した。非晶質化したGe中では原子空孔タイプの欠陥の移動度が大きいことが原因だと考えられる。また、非晶質化処理の有無にかかわらず、セル内に突起が形成され、これもまた、規則子を乱す要因となった。 【充填ナノセル】InSb空洞ナノセルにFeを充填した。本研究では、InSb基板のセル構造に異種物質Feを充填した。堆積方法はマグネトロンスパッタにより、基板温度100℃-300℃で、密な充填を可能とする条件を調査した。全ての基板温度においてセル構造表面にFeは堆積しており、 特にセルの壁上部とセル内部の底に多く堆積していた。セル内部に完全には充填できなかったが、充填ナノセルの実用化への展望を拓いた。 この他、II-VIの探索において、特異なイオン照射挙動を示すものは見いだされなかった。IV族単体半導体、III-V、II-VI化合物半導体全体を探索し、特異挙動を示すものはGe, GaSb, InSbの3つとみなしてよいと考えられる。
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