研究概要 |
本研究では、SrTiO3薄膜を活性層とする薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、ゲート電圧印加によって誘起される二次元電子ガス(2DEG)層の巨大熱電能Sを利用した赤外線センサーの試作を目指した。具体的には、熱的ド・ブロイ波長λDよりも薄い半導体極薄膜上にトップゲート型薄膜トランジスタを作製し、次にゲート電圧印加によって形成される極薄2DEG層の電子輸送及びSを詳細に測定・解析し、さらに極薄2DEG層の赤外線センサー特性(=熱電特性)を調査した。H23年度までに、①ゲート絶縁体として含水ナノ多孔質ガラス(CAN: H. Ohta et al., Nature Communications 1: 118 (2010); Adv. Mater. 24, 740 (2012))が極めて有用で、②含水ナノ多孔質ガラスにより極薄2DEGが誘起できるのは伝導帯下端エネルギー > 水素発生エネルギーの酸化物半導体であることを明らかにした。最終H24年度にはSrTiO3バルク単結晶を活性層とする薄膜トランジスタを作製し、赤外線センサー特性を決定づける熱電特性についてバルク―人工超格子―電界誘起極薄2DEGの比較を行った。その結果、体積キャリア濃度<3×10^20 /cm3では電界誘起2DEGとバルクの熱電特性は変わらないが、4×10^20 /cm3以上のキャリア濃度において極薄2DEGは人工超格子と同様にバルクの5倍の熱電能(=バルクの25倍の性能指数 ZT~2)を示すことが分かった。電界誘起2DEGは人工超格子のような超精密薄膜作製技術を必要としないので、赤外線センサーを作製するための簡便な手法といえるだろう。
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