研究概要 |
酸化物磁性体薄膜を対象に、磁性イオンの価数や分布、格子の歪みなどのサブナノ構造を制御し、また、原子レベルで平滑な薄膜を合成することによって、スピンと紫外・可視光の相互作用に基づく短波長磁気光学、磁性半導体中のスピン偏極キャリアを利用するスピントロニクス、スピンと誘電分極が強くカップリングした系であるマルチフェロイクスのそれぞれの分野に関連した新物質・新材料を開拓し、新しい機能の創出や従来の機能の大幅な増幅を実現して、新規スピン機能を持つデバイスへ展開すること目的としている。磁気光学(ファラデー効果)の観点では、不規則亜鉛フェライトに他の元素を固溶した系を主な対象として、構造と物性の相関を明らかにして機能を引き出す。また、FeTiO_3-Fe_2O_3系、Fe_3O_4-Fe_2TiO_4系、Eu(Ti,Nb)O_3系などの酸化物磁性半導体について原子レベルで平滑な薄膜が合成できる条件を確立し、スピントランジスタなどデバイスを試作する。さらに、EuTiO_3を異なる基板上に成膜して格子不整合を利用した歪みの導入を行うとともに、EuTiO_3系固溶体の形成により電子構造を制御して、誘電特性と磁性の評価ならびに物性の起源の解明を行う。今年度は、特にFeTiO_3-Fe_2O_3系のほか、同じイルメナイト系のMnTiO_3系についても薄膜作製と物性評価を行った。また、一連のEu(Ti,Nb)O_3系薄膜を合成し、電気伝導と磁性を評価して、強磁性の機構が磁気ポーラロンによるものと推測した。さらに、EuTiO_3-BaTiO_3系固溶体(バルク)を作製し、磁性と誘電特性を調べた。BaTiO_3の固溶量が少ないときには、固溶に応じてEu^<2+>の濃度が低下するにもかかわらず強磁性的な挙動が現れ、誘電率も増加することが明らかとなった。EuTiO_3系では基板を変えて成膜を行い、格子不整合に基づく強磁性の発現と大きな誘電率も実現した。
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