研究概要 |
特徴的な組織構造を有する日本独自のMGC材料の破壊靭性値の向上を目指し、新規に小型赤外線加熱単結晶育成装置(FZ炉)を設置し、この装置を用いて新規組成系および凝固条件の探索を行った。FZ炉によるMGC材料化の可能性を調べるためAl_2O_3/Er_2O_3二元系の共晶組の溶解を行った。その結果、凝固条件(回転速度、凝固速度)を適正化することにより単結晶化が可能であることが分かった。ただし、インゴット全体の単結晶化にはまだ成功していない。新規組成系としてAl_2O_3/Sm_2O_3、Al_2O_3/Nd_2O_3二元系の共晶組成を溶解し、共晶反応が存在することを確認し、真の共晶組成を探索した(平衡状態図の共晶組成からはずれている)。Al_2O_3/SM_2O_3系において構成相はAl_2O_3相とペロブスカイト構造のSmAlO_3相であること、Al_2O_3/Nd_2O_3系においてはAl_2O_3相とペロブスカイト構造のNdAlO_3相であることがXRDおよびHRTEMにより明らかにした。これらの組成系についてIF法により破壊靭性値を測定した。Al_2O_3/SmAlO_3系においては凝固い速度1mm/hにおいて破壊靭性値3.8MPa・m^<1/2>が,10mm/hにおいて5.8MPa・m^<1/2>が得られ,これまで最も破壊靭性が高いAl2O3/GAP系より高く、Al_2O_3/SmAlO_3系は有望な組成系であることが分かった。Al_2O_3/NdAlO_3系においては、凝固速度5mm/hにおいて6.7MPa・m^<1/2>の高い値が得られたが、インゴットには多数のクラックが存在しており、クラックを無くすために凝固条件のさらなる探索が必要である。構成相の界面状態を調べるため、Al_2O_3/SmAlO_3系およびAl_2O_3/NdAlO_3系の構成相界面のHRTEM格子像を観察した。その結果、界面にはアモルファス相は形成され、整合性のよい界面が形成されていることが分かった。
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