研究課題/領域番号 |
22360277
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
羽田 肇 独立行政法人物質・材料研究機構, 企画部門, 部門長 (70354420)
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研究分担者 |
坂口 勲 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主幹研究員 (20343866)
齋藤 紀子 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主任研究員 (20354417)
安達 裕 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主任研究員 (30354418)
菱田 俊一 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, グループリーダー (40354419)
大橋 直樹 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境・エネルギー材料部門, 部門長 (60251617)
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キーワード | 透明導電体 / ミリ波 / マイクロ波 / 導波路 / アンテナ / 酸化物半導体 / 酸化インジウム / 酸化亜鉛 |
研究概要 |
金属導体を配置した導波路構造を用いたアンテナにおいて、実用に耐えうる高い効率を実現するための、材料面での検討を進めた。まず、酸化物導電膜の導電性を上げることは、アンテナの効率向上に直結するため、高い、導電率をもった導電膜を形成するための検討を行った。特に、資源問題が取りざたされるインジウム酸化物を含まない、酸化亜鉛をアンテナ材料として応用するための検討を進めた。 酸化亜鉛の特徴の一つに、結晶極性という問題が挙げられ、結晶成長時のドーピング効率に影響を及ぼすことが指摘されている。(0001)面の一方が亜鉛面、他方が酸素面となる。我々は、結晶極性を判別する、すなわち、亜鉛面か、酸素面かを判別するための手法として、光電子分光法を用いる手法を開発してきており、この方法を活用した極性判別、および、ドーピングした薄膜の結晶成長時の極性について検討した。その結果、ドーピング濃度の増加に伴い、亜鉛終端面が優勢になる事が分かった。また、この終端面の変化が、薄膜の微細構造の変化を誘起し、それによって、光学特性が変化している様子を明らかにした。亜鉛終端面は、結晶成長に際し、ドナーを取り込みにくい面である可能性も指摘されていることから、亜鉛終端面が、優勢となる機構の検討を進めている。なお、これまでの検討では、スパッタ法による製膜に置いては、必ずしも、終端面により、ドーパント取り込み量の変化は顕著に見られておらず、極性の問題として解決すべき課題が、成長面に依存した微細構造の変化であり、特に、光学特性の改善のため、その成長機構の解明が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、金属に比べて2桁も導電率が低い酸化物半導体を使った高周波回路を実現することは、ほぼ不可能であろうと考えながらこの挑戦的な課題を提案した。しかし、その予想と大きく異なり、少なくとも、コプラナー型の導波路においては、金属導波路と遜色のない特性を持ち、かつ、目に見えないマイクロ波導波路が実現できている。さらに、この検討を継続することで、実用レベルに近い、目に見えないアンテナを実現できるめどが立ちつつある。
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今後の研究の推進方策 |
導波路としての基本構造においては、目的が達成できるであろうことは確実である。しかし、最終的な応用先としての、モバイル機器への透明なアンテナの実装という目標に対しては、まだ、いくつかの課題が残されている。例えば、アース配線を、基板の裏面に設置するような構造で、透明性を保つことには、大きな壁があると考えており、将来的には、酸化物半導体を応用したアンテナの実現のためには、これまでとは全く異なったアンテナ構造を提案する必要が出てくると考えられる。
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