研究概要 |
本年度は、①強相関酸化物中の酸素欠陥の電界移動と②雛型デバイスによる強相関遷移金属酸化物の輸送特性制御に関して以下のような成果が得られた。 ①強相関酸化物中の酸素欠陥の電界移動 酸素欠損の電界移動により発現する抵抗スイッチング現象について、人工的な酸素欠陥導入が与える効果を検証するため、イオンミリングにより人工的に酸素欠陥を導入したNb-SrTiO3と、導入していないNb-SrTiO3を用いた素子を作製し、抵抗スイッチング特性を比較するとともに、TEM-EELSにより界面構造及びTiの価数を評価した。酸素欠陥を導入することにより、10倍以上のスイッチング速度の向上が見られた。また、酸素欠陥を導入した素子では、界面から離れるにしたがってTi価数の明確な変化が見られた。この結果から、人工的な欠陥導入は酸素欠陥の移動を促進し、抵抗スイッチング特性の向上に有効であることが示された。 ②雛型デバイスによる強相関遷移金属酸化物の輸送特性制御 強相関酸化物(Nd,Sm)NiO3をチャンネル用いた電気二重層トランジスタで観測される約5桁にわたる大きな抵抗変化について、その動作機構として電界による酸素欠陥移動の可能性を検証するため、in-situ放射光X線実験によりゲート電場印加下における(Nd,Sm)NiO3の結晶構造を測定した。測定の結果、電圧印加による格子定数および結晶構造の明確な変化は観測されず、巨大な抵抗変化の起源は単純な酸化還元反応ではなく電子的機構が関与している可能性を見出した。強誘電体を用いた2端子型抵抗スイッチング素子については、金属電極と強誘電体の界面に薄い強相関絶縁体を挿入した界面エンジニアリング素子を開発した。素子特性の精密測定とバンド構造の解析から、界面に挿入した強相関絶縁体が遮蔽電荷と分極電荷を分離することが、抵抗スイッチングの発現に重要な役割を演じていることを見出した。
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