小型カーボンナノチューブ析出装置を用い、高強度炭素繊維にカーボンナノチューブを析出させた。また、機械的特性を単繊維および繊維束単位で評価した。 1.炭素繊維表面への気相法/液相法による触媒の導入を行い、カーボンナノチューブの析出/成長状態をSEMにて確認した。触媒導入方法に違い(気相法/液相法)によらず、カーボンナノチューブは炭素繊維の表面上に一様かつ密に分布していた。また、個々のカーボンナノチューブはお互いに複雑に絡み合いながら3次元的なネットワーク構造を形成していた。ただし、液相法では触媒の濃度によりカーボンナノチューブの析出が困難な場合もあることがわかった。来年度以降の繊維束単位での評価やFRP化に必要な知見が得られた。 2.カーボンナノチューブ析出炭素繊維束にエポキシ樹脂を含浸し、オーブン硬化により繊維束単位での試験片を作製した。カーボンナノチューブ析出した単繊維およびエポキシ樹脂繊維束を用いて、引張特性試験を実施した。気相法による触媒導入では、単繊維でカーボンナノチューブ析出により引張強度および引張強度のバラツキが向上した。一方、繊維束単位で未析出の繊維束の引張強度とほぼ同じであった。液相法による触媒導入では、触媒を高濃度にすると、繊維束単位での引張強度が未析出材料より低くなることがわかった。本原因を明らかにするためには、来年度以降に炭素繊維(カーボンナノチューブ析出炭素繊維)と樹脂のせん断特性を明らかにする必要がある。
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