研究概要 |
平成24年度は平成23年度に引き続き、(A)Mn系金属の強磁場中状態図調査および(b)Fe系金属の強磁場中状態図調査を行った。平成23年3月に起きた東日本大震災等の影響も徐々に回復し一部の強磁場マグネットを除けば実験できるようになって、平成24年度の研究目標はほぼ達成した。得られた研究実績について以下に述べる。 (A)Mn系金属の強磁場中状態図調査 試料は、Mn:Biの10:90, 20:80, 30:70, 40:60, 50:50, 60,40, 70:30, 80:20, 90:10を準備し、東北大学金属材料研究所強磁場センターの全国共同利用で実験を進めた。主に10テスラと15テスラのマグネットを用いたが、これまでの実験結果を基に、18テスラまでの強磁場下MnBi平衡状態図を完成させた。得られた強磁場状態図はゼロ磁場のそれとは全く異なることを明らかにした。(Mistui et al. Mater. Trans. 54 (2013) pp.242-245)。また、CALPHAD法プログラムの磁気エネルギー取り込み方法の改善を目指し研究を進めた結果、分子場近似を取り入れた計算状態図作成手法も確立し、これまでに本研究で行った実験結果をほぼ定量的に再現できた。(Mistui et al.、 J. Alloys & Compound 投稿中) また、昨年度までにMn-Sb系とMn-(Co, Cu, Sb, Ge, Sn)混晶系の試料合成に成功し、一部は強磁場中磁気状態図と磁場中高圧下の磁気状態図を明らかにした。 (B)Fe系金属の強磁場中状態図調査 純良Fe-C合金 について18Tまでの強磁場中の熱分析を進めて、Fe-C合金系の強磁場中状態図はほぼ完成し、現在論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
【A】 Mn系金属の強磁場中状態図調査: H25年度はこれまでの研究成果をもとに、45テスラ中の強磁場状態図の作成を目指す。一方,これまでの強磁場熱分析による解析だけでは、その平衡状態で試料状態など不明な点が残る。そのため、今年度は形態観察により強磁場中平衡状態図の確認を行う。これを実現するために、強磁場中形態観察装置を製作し、強磁場実験によりMn系金属の強磁場中平衡状態(形態)を明らかにする。具体的には以下の手法で進める。(1)Mn系試料の合成は鹿児島大学で行う (担当:小山、広井、伊藤)。(2)試料の品質評価や組成分析は鹿児島大学機器分析室の共同利用機器を使用する(担当:小山)。 (3)8Tまでの実験は鹿児島大学低温実験施設で行う(磁場中熱分析:小山、磁化測定:広井、比熱測定: 伊藤)。8Tを超える強磁場中での実験は、小山が東北大学金属材料研究所附属強磁場超センターと東北大学金属材料研究所宇田研究室の共同利用プログラムを利用して実行する。本年度の当該共同利用プロブラムは採択されている。また、昨年度までにMn-Sb系とMn-(Co, Cu, Sb, Ge, Sn)混晶系の試料合成に成功した。今年度は、強磁場中磁気状態を明らかにするとともに、磁場を制御しMn系磁性材料の構造や機能性に関する基礎物性を評価する。H25年度前半までに得られた結果について 、国際会議及び学術論文で公表する。 【B】Fe系金属の強磁場中状態図調査: H24年度までにFe-C合金系の強磁場中状態図はほぼ完成した。本科研費最終年度を考慮し、本科研費補助金を用いたこの物質系の実験は進めない。これまでに得た結果はすでに国内学会等で 公表及び討論してきた。2013年度はこれまでの結果と議論をまとめ学術論文等でその成果発表に努める。 2-3月中に本研究4年間の総括を行い、公表する。
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