研究課題/領域番号 |
22360287
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野村 直之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (90332519)
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研究分担者 |
塙 隆夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90142736)
土居 壽 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (30251549)
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (60447498)
大野 喜久郎 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50014238)
蘇 亜拉図 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特任助教 (80611532)
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キーワード | MRI対応合金 / 低磁性 / バイオマテリアル / 構造・機能材料 / 医療・福祉 |
研究概要 |
本研究では、核磁気共鳴法による画像診断(MRI)においてアーチファクト(虚像)を発生しない生体用Zr合金の開発を行う。平成23年度は、合金元素添加によりZr-Nb合金の磁化率低減を試みた。添加元素には、ZrやNbより低い磁化率を持ち、固溶強化が期待できるSnを選択し、Snを添加したZr-Nb合金の磁化率と機械的特性を調べ、これらの特性に及ぼす相構成の影響を検討した。Zr-Nb合金中で磁化率が同等で、相構成が異なるZr-3NbおよびZr-9Nb合金を選択した。これらの合金にSnを添加したところ、α相から構成されるZr-3Nb合金の場合、Sn濃度の増加に伴い磁化率は緩やかに減少したが、β相とω相の二相から構成されるZr-9Nb合金の場合にはSn濃度の増加に伴い磁化率は増加した。XRDにより相構成を調べた結果、Sn添加Zr-3Nb合金においてはhcp構造に由来するα相ピークのみが観察された。Sn添加Zr-9Nb合金の相構成は、Zr-9Nb合金ではβ相とω相に由来するピークが観察されるが、Sn濃度の増加に伴い、ω相のピークが弱まった。Sn添加によって減少したZr-3Nb合金の磁化率は、常磁性体としてのSnの磁化率と一致することから、Snはα相中で常磁性的な挙動を示し、合金の磁化率を減少させているものと考えられる。一方Zr-9Nb合金では、Sn添加により低磁化率を示すω相が抑制され、磁化率の高いβ相の割合が大きくなったために磁化率が増加したものと考えられる。つまり、常磁性的な挙動を示すSn添加の磁化率減少効果よりも相構成の変化が合金の磁化率に与える影響が強く現れたために、合金の磁化率が増加したと考えられる。以上より、低磁性の元素を添加した場合でも必ずしも磁化率は低下しない場合があり、相構成の変化を検討する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zr合金の磁化率の低減化を図るためにZr-Nb-Sn三元系合金開発をすすめた結果、磁化率制御因子が合金化元素だけではなく相構成を検討する必要があることを実験的に明らかにできている。また、これまでに得られた実験結果を国内外における学会で発表し、論文化も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度では、磁化率とアーチファクトの関係が明らかとし、平成23年度には低磁化率を得るための因子が明確になりつつある。今後は、低磁化率合金の開発を平成23年度の結果より進め、現在MRIアーチファクトの測定を進めている最中である。また、低磁化率を達成できる合金に対しては、機械的特性の評価を行っていく予定である。得られた結果は順次学会発表を行い、論文化をすすめていく予定である。
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