研究課題/領域番号 |
22360287
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 直之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90332519)
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研究分担者 |
土居 壽 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (30251549)
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (60447498)
蘇 亜拉図 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80611532)
塙 隆夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90142736)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | MRI対応合金 / 低磁性 / アーチファクト防止 / バイオマテリアル / 構造・機能材料 / 医療・福祉 |
研究概要 |
本研究では、核磁気共鳴法による画像診断(MRI)においてアーチファクトを発生しない生体用Zr合金の開発を進めている。本年度は、塑性加工可能な準安定β型Zr合金に注目し、加工により構成相を変化させ磁化率低減を図ることを目的とした。アルゴンアーク溶解炉を用いてZr合金インゴットを溶製し、1173 K、3.6 ksの条件で溶体化処理を行った後氷水中急冷した。これに冷間圧延を施し磁化率の変化を調べた。Zr-14Nb合金の磁化率は圧下率30%まで低下し、それ以上では緩やかに低下した。弾性率は加工に伴い増加したことから、加工初期にω相が誘起されたと考える。一方、Zr-9Nb-3Sn合金の磁化率は圧下率0-10%では大きな変化は見られなかったが、30%以上では圧延方向によって差が認められ、圧下率の上昇につれてND方向の磁化率は上昇し、TD方向では低下した。加工後にα'相が確認されたことから、加工誘起α'相が形成したものと考える。準安定β型合金では、加工による誘起される相が組成によって異なり、ω相とα'相の場合がある。前者ではω相の磁化率がβ相よりも低いために加工により磁化率が低下するが、加工初期で低減効果は失われた。このことはω相が加工初期に形成することを示しており、加工後期では加工誘起変態以外の変形モードが支配的であることを示している。後者においては、α'相の磁化率がβ相と大きく変わらないことから、磁化率に変動を与えなかったものと推測される。加工の後期に磁化率が測定方向により変化したことは、加工により形成したα'相が加工集合組織を形成していることを示唆している。以上より、準安定β型Zr合金に対して圧延加工を施すことで磁化率低減が可能となった。しかし、出現する加工誘起相により磁化率や弾性率が影響を受けることから、目的とするデバイスに応じて加工誘起相を選択する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zr合金の磁化率の低減化を図るために、合金開発に加えて塑性加工を加えた結果、加工により相構成が変化し、加工が磁化率低下に貢献できる合金を見出した。また、これまでに得られた実験結果を国内外における学会で発表し、論文化も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、磁化率に影響を与える因子として相構成が重要であることを明らかにしている。今後は加工可能な低磁化率合金の開発のために、加工誘起変態を有効に利用し、かつ低磁性金属を複合化させることによりZr合金の磁化率低減を目指す予定である。得られた結果は順次学会発表を行い、論文化をすすめていく。
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