高配向化した層状コバルト酸化物を創生するための原理の確立を目的に、粉末焼結体の高温加工中の緻密化プロセス、集合組織の発達過程をCa349ならびにAgでCaの一部を置換した酸化物(以後Ag置換材と表記)、さらにBi-Pb-Sr系の酸化物(以後Bi酸化物と表記)を対象として実験的に調べた。Ca349においては、単軸圧縮加工のひずみ量が-1.0に達するとほぼ緻密化が完了した。目的とする(001)(圧縮面)繊維集合組織は、ひずみ量の増大と共に単調に発達した。ひずみ量-1.0までの集合組織発達には、(001)を表面とする粉末の形状が寄与している可能性もあるが、緻密化が終了した後の集合組織の発達は、塑性変形によるものと考えられる。また、集合組織の発達度は、単にひずみ量だけでなく、加工温度、ひずみ速度にも依存していた。Ag置換材ならびにBi酸化物においても挙動は類似していた。Ag置換材は、同一変形条件におけるCa349よりも高い変形応力を示した。変形応力はひずみ速度によって大きく変化した。 集合組織はいずれの材料においても、単軸圧縮変形条件では変形初期から(001)繊維集合組織となった。これはすべり面が圧縮面に平行になるよう結晶回転したと考えると理解できるが、組織観察ではき裂の発生は認められず、変形の連続性を維持する補足的な変形機構が活動していることが分かった。圧縮試験の定常状態でひずみ速度を急変して応力指数を求めた。その結果、変形条件に依存して、広い範囲で応力指数が変化していることが判明した。補足的な変形機構の活動状況が集合組織形成に大きな影響を与えていることが示唆された。
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