研究課題/領域番号 |
22360290
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福富 洋志 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (90142265)
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キーワード | 高温塑性加工 / 結晶配向 / 熱電変換材料 / 比抵抗 / 酸化物 / 粒界移動 |
研究概要 |
本研究は、変形機構を解明し、それに立脚して配向制御のためのプロセスを設計して熱電変換材料を創生することを目的としている。変形機構の解明のためには状態方程式の決定と共に変形組織のEBSDによる観察が不可欠である。平成23年度にCa349のEBSD観察に初めて成功した。これにより、圧縮変形による結晶粒の扁平化と(001)への優先配向が変形温度、ひずみ速度、ひずみ量に依存して連動して変化していることが判明した。破面観察からの推論の域を出なかった部分もあった優先方位形成の素過程に対する従来の考えの妥当性がこれにより確認された。さらに、定常変形状態を実験的に実現して、応力とひずみ速度の関係を把握し、それに基づいて状態方程式を定めて、プロトタイプの段階ではあるが、変形機構領域図を作成した。 変形機構領域図から、主たる変形機構が結晶すべり変形である変形条件から、拡散クリープが支配的になる条件に遷移する範囲で(001)への優先配向が急速に生ずることが見出された。一方、結晶粒は優先方位が明確になるにつれて形状の扁平度が高くなる傾向にあった。扁平な形状は塑性変形が結晶回転をもたらしていることを意味しているが、拡散クリープが活発になることが重要であることの解析結果は、拡散クリープによってすべり変形が容易になることが結晶回転による配向制御に重要であることを意味している。また、ひずみが小さい段階では見られなかった直線的な結晶粒界が、真ひずみ量が-1.0を超える程度まで高温変形が進行した段階で多数見出された。結晶方位関係の解析から、これらは広義の双晶であることがわかった。このことは、変形中に結晶粒界移動が広範に生じていることの証拠であると考えられる。このように、配向制御プロセスの確立に必要な優先配向のメカニズムが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、変形機構の解明に基づいて配向制御のためのプロセスを設計し、熱電変換材料を創生することを目的としている。平成22、23年度の研究成果を基に変形機構領域図が作成できた。その結果、プロセス設計の基礎となる、高配向化が転位のすべり運動と拡散クリープが相補的に機能している場合に生ずることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
変形機構領域図の精緻化、それに基づくプロセス設計、さらにプロセスの実行と熱電変換特性の評価を実施して、高性能熱電変換材料の実現を図る。本研究終了後にさらにこの分野の研究を発展させるために、熱間加工による集合組織の制御についてのこれまでの知見の体系化を進める。
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