研究課題/領域番号 |
22360291
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹中 康司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (60283454)
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キーワード | 逆ペロフスカイト / 磁性材料 / 磁気構造相関 / 負熱膨張 / 磁歪 / 磁気冷凍 / 熱膨張制御 / アクチュエータ |
研究概要 |
多彩な磁気的性質が注目される逆ペロフスカイトM_3AX(M=Cr、Mn、Fe;X=Nなどの侵入元素)の機能を生み出す磁気構造相関の学理を明らかにし、その人為的制御から負熱膨張材料、磁歪材料、磁気冷凍材料などの機能材料創製を目指す。今年度は、強磁性形状記憶効果に由来する巨大磁歪を示すMn_3CuNについてX線MCDの測定を行い、この物質の磁性はMnのみで決まること、そのMnの3d電子の軌道磁気モーメントが小さいことを明らかにした。強磁性形状記憶を示すNi基ホイスラー合金などでは、磁性元素(Ni基ホイスラー合金ではMnとNi)の3d電子の軌道磁気モーメントが相対的に大きく、また、結晶構造における大きな異方性が特徴となっている。つまり、結晶磁気異方性を大きくする要因が明瞭に存在している。これに対して、結晶構造の異方性も小さく、軌道磁気モーメントも小さいマンガン逆ペロフスカイトで、強磁性形状記憶効果をもたらす結晶磁気異方性がどこから生まれるのかは、未解明の大きな問題と言える。本研究の結果は、強磁性形状記憶合金としての逆ペロフスカイトの特異性を明瞭に示したものである。材料探索としては、強磁性形状記憶効果による巨大磁歪を発現することが明らかになったMn_3SbNについて、元素置換により動作温度向上などを試みた。しかしながらこれまでのところ、元素置換に対して特性の変化が鈍く、著しい特性向上も、逆に著しい特性の劣化も確認できていない。これは、元素置換により転移温度はじめ物性が敏感に変化する他の逆ペロフスカイトと比較して極めて異例で、来年度、さらに積極的な元素置換・特性制御を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2カ年で、新しい強磁性形状記憶合金となるMn_3SbNを発見するなど、新物質・新材料開発の点で特筆すべき成果があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで2カ年の研究により蓄積された、元素置換、局所歪やXサイトのノンストイキオメトリに関する知見を活かし、材料開発に取り組む。とりわけ、巨大磁歪物質Mn_3SbNの動作温度向上、動作磁場低減、発現磁歪の増大に注力する。新規材料探索では、希土類を活用し、遷移金属と希土類の磁気モーメントの結合から、3d電子の高い磁気転移温度と4f電子の大きな結晶磁気異方性を両立させ、高い温度で大きな磁歪を発現する物質の開発を目指す。加えて、逆ペロフスカイトの薄膜作製を行う。特に積極的に基板との格子定数ミスマッチを活用して、歪による機能制御・創出を試みる。上記の材料学的研究成果をもとに、逆ペロフスカイトで実現される豊かな物性の源泉となる磁気構造相関の学理構築を目指す。
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