研究概要 |
燃料電池化学過程のような不均一系触媒反応は、表面極近傍(第1,2原子層程度)の幾何学的原子構造とその電子的特性により支配される。したがって、バルク合金構造(組成)、最表面構造(組成)および触媒特性の相互関係を明確化することが新規合金触媒開発に向けたロードマップを材料科学・加工学的提示するための前提となる。本研究は非Pt系新規電極触媒材料開発フェーズにおける原子・分子論的指針を材料学的に明らかにし、その開発設計指針の提示を目指す。本年度は非Pt触媒開発に先立ちPt使用量の低減を目指しAu(111),(100)単結晶基板上にPtをMBE法により原子層レベルで堆積し、酸素還元反応を中心に電気化学特性を検討した。 超高真空(UHV)中で作製したPt/Au(111)、Au(100)の表面構造を高速反射電子線回折法(RHEED)で評価した後、UHV中からN_2雰囲気としたグローブボックス内に試料を搬送し、Ar脱気0.1M HClO_4溶液中でサイクリックボルタモグラム(CV)をさらに酸素飽和溶液中で対流ボルタモグラム(LSV)測定を行った。 1原子層のPtを室温にあるAu(111)上に堆積した場合、酸素還元反応活性はPt(111)に比較し約2倍であった。しかし、同一膜厚のPtを基板温度473Kで堆積すると、Pt-Au間の相互拡散が進行し最表面Pt原子数が低下し、結果として活性はPt(111)に比較して著しく低下する。Au(100)基板の場合、基板表面が再構成し、最表面原子密度が上昇するのに伴い2原子層目の原子密度が低下するため、4原子層厚相当のPtを堆積後でもAu(100)基板を完全に被覆することが出来ず、Pt(100)に比較して活性は低い。以上の結果から最表面Pt原子数がPt-Au合金系の酸素還元反応活性を支配していることがわかる。
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