研究課題/領域番号 |
22360299
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
成島 尚之 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20198394)
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研究分担者 |
上田 恭介 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40507901)
川村 仁 東北大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (00110651)
春日 敏宏 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30233729)
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キーワード | チタン / 非晶質リン酸カルシウム / シリコン / 生体吸収性 / 表面改質 / 骨適合性 / ドライプロセス / 動物実験 |
研究概要 |
(1)非晶質リン酸カルシウムからのSi徐放性に及ぼす熱処理の影響 (a)熱処理に伴うSi添加非晶質リン酸カルシウムの結晶化条件把握: RFマグネトロンスパッタリング法により作製したSi添加非晶質リン酸カルシウム膜を673~1073K、大気中で7.2ks熱処理したところ、873Kにおいてハイドロキシアパタイトへの結晶化が確認された。873Kよりも低温では結晶化せず、高温ではTiO_2やCaTiO_3の形成が顕著になった。コーティング膜とチタン基板との密着力は熱処理に伴いやや低下したものの、50MPa程度を保っていた。 (b)Si徐放挙動の追跡: 310Kに保持したTris緩衝溶液中におけるコーティング膜からのイオン徐放を定量的に評価した。コーティング膜中のSi濃度の増加に伴いSiイオン徐放量も増大した。Siイオン徐放速度は浸漬初期で大きく、浸漬時間の経過に伴い低下する傾向が見られた。 (2)ウェットプロセスを利用したリン酸カルシウム膜中への元素添加プロセス確立および材料学的評価 MgイオンフリーのSiイオン添加Kokubo溶液にNaOH処理を施したチタン基板を浸漬することでSi含有アパタイト膜を作製できた。 (3)RFマグネトロンスパッタリング法により作製したリン酸カルシウム動物埋入実験後試料の評価 (a)組織学的評価: 骨接触率は埋入後2週および4週、コーティング材においてコントロール材(コーティング無し材)と比較して有意に高い値が得られた。一方、骨増生量に関しては埋入初期で有意差が観察された。有意差が観察される時期が異なる理由を優先的な骨形成位置の観点から考察した。また埋入2週以降、共鳴周波数分析(RFA)のISQ値と引き抜きトルク値には比例関係があることを明らかにした。 (b)インプラント-骨界面分析: 埋入後1週~2週の間にコーティング膜が吸収されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ウェットプロセスに関してはおおむね計画通りであるが、RFマグネトロンスパッタリングを基礎としたドライプロセスではSi,Nb,Mgなどの元素を添加した非晶質リン酸カルシウムコーティング膜の作製に成功するとともに、動物実験も順調に進行しており当初の計画以上に進展していると考えている。特に動物実験においては、骨接触率や骨増生量から生体吸収性リン酸カルシウム膜の有用性を示し、共鳴周波数分析(RFA)のインプラント安定性指標であるISQ値と引き抜きトルク値の間に明瞭な比例関係を見いだすなどの成果を挙げた。
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今後の研究の推進方策 |
生体吸収性リン酸カルシウムへの元素添加はインプラントの骨適合性向上ばかりでなく、細胞の分化や接着性にも関与することから生体材料として幅広い応用が期待される。これまでの研究でターゲットの自由度が大きいRFマグネトロンスパッタリングは有力な元素添加リン酸カルシウム作製手法であることを示すことができたと考えている。平成24年度は細胞培養を基礎とした手法により、共同研究者と密接な関係を保ちつつ、元素添加リン酸カルシウム膜の生物学的評価を中心に研究を遂行する。また、平成24年度は最終年度であることから、国内国際会議での成果の公表や投稿論文の発表なども積極的に行う予定である。研究が計画以上に進行していることから、ドライプロセスを利用したチタン表面へのアナターゼ形成とその生物学的評価に関しても検討したいと考えている。
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