研究課題/領域番号 |
22360300
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 泉 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20400278)
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研究分担者 |
原 信義 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40111257)
赤尾 昇 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80222503)
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キーワード | 水素侵入 / 硫化物系介在物 / 水素透過 / マイクロ電気化学セル / 炭素鋼 |
研究概要 |
水素侵入は、介在物溶解による新生面露出や溶解生成物の形成などの多数の電気化学反応に起因する複雑な現象であり、これを解明するため、単一介在物の挙動を捉えることが可能な内径160μm程のマイクロ水素透過セルを開発した。先端部の内経を160μm程に狭めたガラス細管を用い、その先端(端部)にシリコーンシーラントを塗り、試験片に密着させる方式のキャピラリー型電解セルとした。これを光学顕微鏡の対物レンズ部に取り付け、ビッカース硬度計と同じ原理で、顕微鏡で特定した位置の水素侵入挙動を計測できるようにした。試験片背面の水素引き抜き側に関しては、内径3mm程のアクリル樹脂製の電解セルを作製した。水素引き抜き側の電解液は0.1M NaOHとし、高純度Ar(アルゴン)にて、48時間以上バブリングを行った。水素引き抜き側の設定電位は、-0.1V(vs.Ag/AgCl,3.33MKCl)とし、残余電流を低下させるため、水素引き抜き側の試験片の表面には、Pd(パラジウム)のめっきと蒸着を施した。 微量のS(硫黄)を添加した構造用炭素鋼S45Cを試験片として、MnS系介在物を含む微小領域と介在物が存在しない領域を狙い、内径160μmのキャピラリー型セルを用いて0.1M NaCl水溶液を電解液として自然浸漬の状態を形成した。その結果、MnS系介在物を含む領域にNaCl水溶液が接触した場合のみ、試験片の裏面にて水素透過電流を計測することができた。これらのことから、MnS系介在物は炭素鋼の水素侵入反応に関して、重要な役割を担っていることが分かった。今後、定量的な解析を進め、水素侵入に及ぼすMnS系介在物の影響を解明する。
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