研究概要 |
アモルファス炭素膜は,ダイヤモンドのsp3結合とグラファイトのsp2結合の両者を原子の骨格構造とした硬質膜である.このアモルファス炭素膜は0.8~3.0eVの光学バンドギャップを有しているが,半導体として応用されている例は,パッシベーション膜を除きほとんど無いといえる.その理由としてフェルミ準位の制御の難しさや,電気伝導性やバンドギャップなどの電気的・光学的特性がシリコン等の他半導体材料に比べて大きく劣ることなどが挙げられる.本研究では金属元素をドーピングすることにより半導体として利用可能な特性を有するアモルファス炭素膜の開発を目的として,まず電気抵抗に着目し,低抵抗の膜の作製を試みた. マイクロパルス電源を用いたスパッタリング装置を開発し,金属ドープアモルファス炭素膜を作製した.ソースガスとしてArガスを,炭素ターゲットへのドーパントとしてSb(アンチモン)を用いた.印加電圧を3kV, 4kV, 5kVと変化させ,アモルファス炭素膜の電気特性を測定した.基板にはp型シリコンを用い、膜の性質をGD-OES分析、表面形状測定、表面抵抗測定により評価した.さらに生成したアモルファス炭素膜を電気炉を用いて100℃の間隔で300~600℃の範囲でそれぞれ10分間ずつアニールし、表面抵抗をアニール前と比較した.各印加電圧で成膜したアモルファスカーボン膜の表面抵抗率とアニール後の抵抗率を測定した結果,成膜後のノンドープ炭素膜の表面抵抗率が約10^7Ω/sqであったのに対してSbを添加することで10^6Ω/sqに減少させることができることがわかった.さらに,アニールを行うことにより,10^2Ω/sqまで抵抗率を低減できることがわかった.これは膜中の炭素の構造が変化し,水素が脱離してsp2結合に変化したことが原因であると考えられ,今後さらに微細構造の変化を検討してゆく予定である.
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