研究概要 |
本研究は,アモルファス炭素膜の生成過程を把握し高変換効率の太陽光発電を実現することを目的とするものであり,本年度は以下の成果が得られた. 1.アモルファス炭素膜の欠陥低減の試み イオン照射量と照射イオン種によって,アモルファス炭素中の欠陥密度がどのように低減するかをESRにより分析して検討した.さらに水素イオン雰囲気下でのアニーリングが欠陥密度の低減に有効であることを示し,1立方センチあたり10の18乗程度の欠陥を,10の16乗オーダーまで低減することのできることを明らかにした. 2.アモルファス炭素膜の電気的特性・光発電特性の評価 n型及びp型の単結晶Si基板上にRa=0.1nm以下の平滑なアモルファス炭素膜の合成を行い,膜の微細構造が光起電力特性にどのような影響を及ぼすかを検討し,太陽光発電特性を太陽光発電シミュレータにより測定することによりsp3/sp2クラスターの構造と電気的特性との関係を検討した. 3.アモルファス炭素膜生成の基礎過程の検討 高分解能発光分光分析システムをさらに改良し,プラズマ中の化学種の濃度がどのように変化するかを詳細に分析した.その結果,C1からC6までの発光がみられ,アセチレンを原料とした場合にはC2系の発光強度が高いことがわかった.また,アセチレンに水素を1:1で導入しても発光種はあまり変化しないことがわかった.この知見を基に,1.に示したように合成中ではなくアニーリングを試み,欠陥低減に成功した. 4.アンチモン(Sb)ドープアモルファス炭素膜の電気的特性評価 Sbドープしたアモルファス炭素膜を作製して光学バンドギャップ等を調べ,さらに300℃から900℃のアニーリングによる欠陥密度低減を試みた.その結果,900℃程度でアニーリングすることにより導電性を向上させ,欠陥密度を1立方センチ当たり10の16乗程度に低減できることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アモルファス炭素膜の生成過程を把握し高変換効率の太陽光発電を実現することを目的として「どのような生成過程でどのような構造の膜が得られるか」を明らかにするなかで,欠陥の低減が最も重要な課題であった.本年の研究では,ESR(電子スピン共鳴)を用いて実際に生成膜の欠陥密度を測定し,1立方センチ当たり10の16乗程度と2桁低減することが出来た.さらに,Sbドープ時にも10の16乗の低欠陥密度の膜が得られたことから,順調に進展していると判断している.
|