研究概要 |
本研究は,アモルファス炭素膜の生成過程を把握し高変換効率の太陽光発電を実現することを目的とするものであり,最終年度の本年度は以下の成果が得られた. 1.ボロン(B)ドープアモルファス炭素膜の作製と電気的特性の評価:p型のアモルファス炭素膜を合成するために,トリメチルボロン(TMB)をドーピングガス,メタンを原料としたプラズマCVD法により,Bドープアモルファス炭素膜を作製することを試みた.TMBとメタンとの比は,0,0.17,0.29,1.0%に変化させた.V-I特性評価の結果より,Bをドープしたアモルファス炭素膜はp型を示すことが示唆された.また,UV-VIS測定結果より,Bがドープされていないアモルファス炭素膜の吸収端は290nmであったのに対して,Bドープにより吸収端の波長が長波長側にシフトし,1.0%においては360nmまで上昇することを明らかにした. 2.PVD法によるSi-C膜の合成と特性評価:次に,n型のアモルファス炭素系薄膜を合成するために,マグネトロンスパッタ装置による合成を行った.合成された膜のC1SおよびSi2PのXPS(X線光電子分光分析)スペクトルを分析することにより,出力300WにおいてはC-SI,C=C,C-Cがそれぞれ40.1%,13.9%,45.9%であることを明らかにした.そして,印加電力を上昇させるにつれてC=C結合比が上昇し,400Wでは23.3%に達することがわかった. 3.アモルファス炭素太陽電池の試作:以上の成果と,昨年度までの成果を総合し,アモルファス炭素のみからなる太陽光発電素子を試作し,太陽光発電特性を太陽光発電シミュレータにより測定することにより特性を調べた,その結果, Voc=20~49.0 mV,Isc=0.01uAを示すことがわかった.
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